インクルーシブデザイン・ハニカムとその事例(前編)

エピソード3

    Report

    :インクルーシブ・デザインハニカムから考える共創のはじめかたキットと事例集

    インクルーシブデザイン・ハニカムとその事例(前編)

    【連載第3回】 インクルーシブ・デザインハニカムから考える共創のはじめかたキットと事例集


    前回の記事では、共創の方法としてのインクルーシブデザインについて紹介しました。

    しかし実際にプロジェクトで取り組む際には、「なぜインクルーシブデザインに取り組むのか」「どのような価値を生み出したいのか」を整理することが重要です。
    そこでCULUMUでは、インクルーシブデザインに取り組む目的を考えるためのフレームワークとして、「インクルーシブデザイン・ハニカム」を提案しています。

    CULUMUの考える「インクルーシブデザイン・ハニカム」

    CULUMUでは、インクルーシブデザインの定義はプロジェクトごとに考えることを大切にしています。ビジネスにおけるインクルーシブデザインの目的として扱うことの多い6つの領域を「インクルーシブデザイン・ハニカム」として整理しました。
    インクルーシブデザインやインクルージョンに取り組む際は、「私たちにとってのインクルーシブとは?」を考えるところから始めてみましょう。なお、目的は複数ある場合がほとんどなので、1つに絞り込む必要はありません。

    インクルーシブデザインの目的を、機能的価値・情緒的価値・イノベーション・ブランド価値・当事者意識・社内プロセスの6領域で整理した図

    6つの目的

    ハニカムは、マーケット・カンパニー・カスタマーの3つの視点から構成されています。

    Market

    • 製品・サービスのイノベーション創出

    • 製品・サービスのブランド価値向上

    Company

    • 社員の当事者意識向上

    • 社内のプロセスイノベーション

    Customer

    • 多様な人々の機能的価値向上

    • 多様な人々の情緒的価値向上

    インクルーシブデザインに取り組む際は、どれか一つだけを目的にする必要はありません。実際には複数の目的が重なりながらプロジェクトが進むことも少なくありません。

    重要なのは、「私たちにとってのインクルーシブとは何か」を考え、自分たちの目的を明確にすることです。

    本記事では、ハニカムの中でも「Market(市場)」の視点に着目し、インクルーシブデザインがどのように事業価値やブランド価値につながるのかを見ていきます。

    製品・サービスのイノベーションの創出

    イノベーションの創出を目指す

    マーケット視点で、新たな製品・サービスやイノベーションの創出を目的とするパターンです。
    インクルーシブデザインの手法を活用して、これまで製品・サービス開発において、メインユーザーから排除されてきたマイノリティの人々の課題や工夫からインサイトを得ることを期待します。

    メインユーザーとして排除されてきた人々は、平均的なユーザーの抱える潜在的な課題が顕在化されていることが多く、これまで見えなかった新たな視点から価値創造を行うことが期待できます。

    Market視点における製品・サービスのイノベーション創出のアイコン

    NIKE ゴーフライイーズ - 着脱簡単なハンズフリーシューズ

    障害を持ったアスリートや靴の着脱の多い日本文化にインスピレーションを受け生まれたシューズです。加齢とともにかかんで着脱する高齢者やお腹の大きな妊婦の方、子どもを抱得ながら靴を履かなければいけない女性など、幅広い人々にとっても使いやすい製品として注目されています。

    着脱簡単なシューズはこれまで高齢者向けなどで多く販売されてきましたが、「普通の靴」として世代を問わないスタイリッシュなデザインが人気を集めています。

    花王 アタックZERO - 片手で計量できる洗濯用洗剤

    目の不自由な方やシニア層の方からのニーズを元に、プッシュするだけで誰でも簡単に使用することができる洗剤ボトルが生まれました。購入者からは、「片手で使え、キャップを開けないので、手が汚れないからとても使い勝手が良い」「洗濯するのが楽しくなった」などの声が寄せられています。

    手を使わずに着脱できるNIKEのハンズフリーシューズ「ゴーフライイーズ」、片手でプッシュして計量できる花王「アタックZERO」のボトルの商品写真

    製品・サービスのブランド価値向上

    ブランド価値の向上を目指す

    事業・経済的価値の向上とともに、D&Iや社会的価値の向上も目指すことで、製品・サービスのブランド価値向上を目指すパターンです。

    マーケット視点では、事業収益性だけでなく、企業の社会的責任やDE&Iの重要性がますます求められています。製品やサービスとしてのブランド指針やガイドラインをつくり、発信していくことで、こうした市場の要請に応え、ブランド価値を高めることが期待できます。

    Market視点における製品・サービスのブランド価値向上のアイコン

    ソニー

    ソニーは日本でいち早くインクルーシブデザインのアプローチを取り入れた企業の一つです。
    2023年には、開発過程で障害者や高齢者の意見を聞くプロセスを設けることが発表されました。こうした指針は、製品開発力の向上だけでなく、社会にとってやさしい先進的な取り組みを行うブランドであるというイメージにもつながります。

    コクヨ

    コクヨでは、2030年までに新たに上市する商品の半数以上をインクルーシブデザインによってつくるという指針を発表しました。
    この方針は企業のサステナビリティ戦略と一体となって進められ、対外的にも多くの情報が発信されています。

    ソニーとコクヨのインクルーシブデザインへの取り組み方針のまとめ

    まとめ

    インクルーシブデザインは、多様な人々の課題や工夫から新たな価値を発見し、製品・サービスのイノベーション創出やブランド価値向上につなげる可能性を持っています。

    次回は、「Company」と「Customer」の視点から、社員の当事者意識向上やプロセスイノベーション、多様な人々の価値向上につながるインクルーシブデザインの事例を紹介します。

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