特性で理解するシニア世代と商品事例

エピソード2

    Report

    :商品開発から見えたシニア・高齢者と共創するガイドラインとは

    特性で理解するシニア世代と商品事例

    【連載第2回】 商品開発から見えたシニア・高齢者と共創するガイドラインとは


    シニア世代に多く見られる特性として、例えば以下のようなものがあります。

    • 目が見えづらい

    • 耳が聞こえづらい

    • 足腰が弱くなる

    • 余暇時間の増加

    • デジタル活用が難しい

    • つながりの希薄化

    • 金銭的な不安

    • 認知機能の低下

    これらの特性について、それぞれどのような背景や課題があるのかを、以下で詳しく見ていきます。

    目が見えづらい

    高齢になると起きやすい、さまざまな目の病気

    年齢が進むにつれ、近い距離のものが見づらくなる「老眼」だけでなく、さまざまな目の病気が起こりやすくなります。また、水晶体が白濁し黄変することで、さまざまなものが黄色のフィルターを通して見ているように見えるなど、色覚にも変化が生じます。

    高齢者に多い目の病気として、ものが何重にも見えたりかすんで見える白内障、眼圧が上がり視野欠損を伴う緑内障、視野の中心が歪んだり暗くなったりする加齢黄斑変性などの病気が発症しやすくなります。

    社会の高齢化が進むにつれ、加齢に伴う色覚特性に配慮した製品・サービス、公共空間づくりが重要になっています。

    白内障など高齢者に多い目の病気の例と、20代の見え方と加齢により黄味がかった状態の見え方を比較した図

    耳が聞こえづらい

    聴力の低下が、さまざまなリスクの原因に

    聴力が落ちると、生活のさまざまな面に支障をきたします。日々の会話が難しくなるだけではなく、危機察知能力の低下や自信喪失、認知症の発症リスク上昇につながる可能性もあります。

    加齢による聴力の低下は40代から始まり、高音域から始まります。60歳代になると、軽度難聴レベルまで聴力が低下する音域が増え、聞こえが悪くなったことを感じる人が急激に増えてきます。70歳を超えると、ほとんどの音域の聴力が、軽度難聴〜中等度難聴レベルまで低下します。65〜74歳では3人に1人、75歳以上では約半数が難聴に悩んでいるといわれています。

    日常会話や危険察知など、聴力低下で起こりうる生活リスクをイラストで示した図

    足腰が弱くなる

    40代から筋力の低下が始まる

    筋力の低下は、運動や栄養状況など生活習慣にも大きく依存するため、その程度を年代によって一概にくくることはできません。60代であっても、ちょっとしたケガや病気がきっかけとなり、歩くことが困難になってしまうケースもあります。高齢者の歩行の特徴として、一般的に以下のようなものが挙げられます。

    • 歩幅の縮小: 高齢者の多くは、若い頃に比べて歩幅が狭くなります。これはバランス感覚の低下や筋力の衰えによるものです

    • 歩行速度の低下: 高齢者は一般的に歩行速度が遅くなります。これは筋力や関節の柔軟性の低下、または身体の不調によるものです

    • 姿勢の変化: 高齢者の歩行では、前かがみの姿勢や背中が丸まる姿勢が見られることがあります。これは筋力の低下や骨密度の減少によるものです

    • 不安定さ: 高齢者の歩行は、バランス感覚の低下により不安定な場合があります。歩行中に転倒するリスクが高まるため、注意が必要です

    • ゆっくりとした動作: 高齢者の歩行は、一歩一歩がゆっくりとした動作になることがあります。これは筋力や関節の動きの制限によるものです

    最近では自分で歩き続けるための、多くの健康維持サービスやリハビリがあります。

    年齢とともに筋力・活動量が低下し、日常生活に影響が出る流れを示すグラフ

    余暇時間の増加

    1日の3分の1を占める余暇。趣味や仲間づくりが重要に

    30代後半ではわずか4時間半しかなかった余暇時間は、退職を迎える60代になると、7時間近くになります。こうした余暇時間は、シニア世代に生きがいをもたらします。

    平成26年の内閣府の調査によると、シニア世代が生きがいを感じるときとして、最も多くあげられたのが「趣味やスポーツに熱中している時」、続いて「友人や知人と食事、雑談している時」となっています。その次に、家族との団欒時間や旅行、仕事の時間に生きがいを感じており、友達や仕事仲間といった社会的つながりや趣味があることが、シニア世代の生きがいをもたらす重要な要素となっていると考えられます。

    なお、余暇時間に満足していないシニア世代は、その理由として「仲間がいない」と回答しています。この傾向は男性に多く、会社を退職したあと、地域活動や社会活動に積極的な参加をできるかどうかが、余暇時間の充実度合いに影響を及ぼすと考えられます。

    年代別の余暇時間の増加と、生きがいを感じる場面を並べて示したグラフ

    デジタル活用が難しい

    スマートフォン所持率は高まるも、利用率は半数程度

    スマートフォンの普及に伴い、ここ数年でシニア世代でもスマートフォンの所持率が急激に増加しています。2022年のモバイル社会研究所の調査によると、60代では90%、70代でも70%以上の人がスマートフォンを所持しているようです。

    しかし、スマートフォンを所持しているからといって、全員が若者世代のように使いこなせるわけではありません。総務省の調査によると、60代以上の世代のスマートフォン利用率は半数程度にとどまっています。スマートフォンを利用しない理由として、「自分の生活には必要ない」と感じたり、「使い方がわからない」といった声が多くあげられています。

    デジタル活用へのモチベーション向上や、シニア世代の特性を理解し、使いやすいと感じるデジタルサービスの提供が求められていると考えられます。

    60代・70代のスマホ所有率の上昇と、年代別の利用頻度を示したグラフ

    つながりの希薄化

    社会的孤立が、健康・ウェルビーイングに影響

    シニア世代では、退職などを契機に社会的つながりが徐々に希薄になる傾向があります。また、最近では核家族化が進み、シニア世代では配偶者との死別などを契機に単身で暮らす高齢者も増えています。

    千葉大学の研究によると、社会的孤立が健康やウェルビーイングの指標との関連性が認められました。研究チームは、社会的孤立を配偶者・子ども・親戚・友人・社会参加の5つの指標の合計(5点満点)と、指標毎に評価しました。5つの指標のうち4つ以上該当する場合、1つも該当しない場合と比較して死亡リスク1.9倍、認知症1.6倍、介護リスク1.5倍、その他抑うつ、幸福感、希望、歩行、健診受診など様々な指標との関連が明らかになりました。個別の指標では、友人との交流・社会参加で評価した社会的孤立が広範な健康・ウェルビーイング指標との関連が認められました。

    本研究では、友人や社会とのかかわりを保つことが、社会的孤立による健康・ウェルビーイングへの影響を軽減するために有用であろうと結論づけています。

    友人との交流や社会参加からの孤立が、健康・幸福感に関連することを示す表

    金銭的な不安

    8割以上の人が、老後の生活に不安感を持っている

    生命保険文化センターの調査によると、老後の生活について不安感を持っていると回答した人は8割を超えています。不安の内容として、公的年金だけでは不十分であったり、日常生活に支障が出ること、自助努力だけでは足りないのでは、という意見が多く見られます。

    仕事ができなくなってしまった後の病気や怪我の治療費や、老人ホームの入居費用などの大きな出費は不安要素となるでしょう。

    一方で、内閣府の調査によると、60歳以上の約4分の3が心配なく暮らしているというデータもあります。性別に関わらず、不安は年齢が上がるごとに低くなる傾向があります。

    仕事を退職し、年金や預貯金に合わせたセカンドライフを送っていくことで徐々に不安感が軽減されるのかもしれません。預貯金の額やライフスタイルは人それぞれなので、どのような生活スタイルのシニアに向けたサービスを展開するかを決めることが重要になるでしょう。

    老後の生活への不安感を、全体・男性・女性別の割合で示した横棒グラフ

    認知機能の低下

    2025年には、高齢者の5人に1人が認知症に

    内閣府の65歳以上の認知症高齢者数と有病率に関する将来推計によると、認知症の有病率は年々増加すると予想され、2025年には25%を占めると言われています。認知症の特徴として、以下のような症状があると言われています。

    • 記憶障害: 特に短期記憶が影響を受け、日常生活での出来事や人の名前を忘れることがあります

    • 認識障害: 物事を正しく理解できなくなることがあります。例えば、家族や友人を認識できなくなることがあります

    • 言語障害: 言語の理解や使用に問題を抱えることがあります。日常会話での適切な言葉の選択が難しくなることがあります

    • 空間認識障害: 空間的な判断や方向感覚が低下することがあります。例えば、道に迷いやすくなったり、物の位置を正確に把握できなくなることがあります

    • 判断力の低下: 複雑な意思決定が難しくなり、日常生活での判断が誤ったり、安全上の問題が生じやすくなることがあります

    65歳以上の認知症患者数と有病率が将来増える見込みを示すグラフ

    特性を捉えたイノベーティブな製品

    特性を捉えることで、今までになかった価値を生み出しやすくなる

    花王 アタックZERO ー 片手で計量できる洗濯用洗剤

    目の不自由な方やシニア層の方からのニーズを元に、プッシュするだけで誰でも簡単に使用することができる洗剤ボトルが生まれました。購入者からは、「片手で使え、キャップを開けないので、手が汚れないからとても使い勝手が良い」「洗濯するのが楽しくなった」等、好評を集めています。

    片手で押して計量できるアタックZEROの洗剤ボトルを並べた商品画像

    NIKE ゴーフライイーズ ー 着脱簡単なハンズフリーシューズ

    障害を持ったアスリートや靴の着脱の多い日本文化にインスピレーションを受け生まれました。加齢とともにかかんで着脱する高齢者にとっても使いやすい製品として注目されています。高齢者向けに着脱の楽な靴も多く販売されているものの、「普通の靴」として世代を問わないスタイリッシュなデザインが人気を集めています。

    手を使わず着脱しやすい構造を示すNIKEゴーフライイーズの側面画像

    コメダ珈琲店 とろみコーヒー ー 「コーヒーからの卒業」を遅らせる

    摂食嚥下障害の方でも飲みやすいインスタントコーヒーです。日本には「むせることが怖く、コーヒーを飲むことが怖くなる」というシニア世代が約100万人いると言われています。従来のコーヒーにとろみ剤を入れた場合よりも、味や香りを損なわず美味しいと人気を集めています。

    とろみコーヒーのパッケージと、カップに注がれたコーヒー
    keyboard_arrow_right

    ジャーナルトップへ

    keyboard_arrow_right

    関連記事

    最新のレポート

    当事者発想
    あなたの誰かのためは、何のためか

    こちらで提供中 amazon
    新規タブで開く
    本の表紙

    好評
    発売中

    Contact

    お問い合わせ

    お気軽にご相談ください。お見積もり依頼も可能です。1営業日中にご返信いたします。

    お問い合わせをする

    keyboard_arrow_right

    Service introduction

    サービス紹介資料

    CULUMUが提供するインクルーシブなデザインソリューションをご紹介しています。ぜひご活用ください。

    資料をダウンロードする

    keyboard_arrow_right

    採用情報

    Careers

    N=1の当事者の声からしか、生まれない未来がある
    “つくる”を超える“共創”に挑戦する仲間を待っています

    詳しく見る

    新規タブで開く