建築業界におけるインクルーシブデザインの必要性
エピソード2
Report
:多様なユーザーとの共創プロセスを実現するインクルーシブな公共空間・商業施設事例集

【連載第2回】多様なユーザーとの共創プロセスを実現するインクルーシブな公共空間・商業施設事例集
建築は、多様な人々が利用するため、さまざまなバックグラウンドを持つすべての方が利用できる環境を作り上げることが求められます。
インクルーシブデザインのサービス開発プロセスを取り入れ、誰もが利用しやすい建築サービスが提供されることで、建築需要の拡大や地域の活性化、また、企業の社会的責任を果たすことにも繋がります。サービスのアクセシビリティ設計やユーザビリティ改善、翻訳支援などの取り組みを進めることで、顧客満足度や競争力の向上が期待でき、持続可能な建築産業モデル構築につながると言えます。
超高齢化社会への突入
令和5年版、高齢社会白書による試算では、2035年までに高齢者(65歳以上)の人口が3割を超えるといわれています。これは端的にいって3割のユーザーが高齢者になることを意味しています。世代別金融資産においても無視できないセグメントである高齢者に対する施策として、高齢者間のデジタル格差、PC・スマートフォンの利用比率などを考慮したインクルーシブな取り組みが求められています。

世界で多様な課題を抱える方たち
約13億人(世界人口の15%)がなにかしらの障害を抱えながら生活しています。また、家族や施設の介護者など障害によって直接的、間接的に影響を受ける人の数は20億人(世界人口の約30%)に上ります。

バリアフリー・ユニバーサルデザインに加えるインクルーシブという考え方
バリアフリー・ユニバーサルデザインの考え方は、国内でも広く認知されるようになった一方で、対象が高齢者や障害者の方に向けた内容に偏る傾向が見られる。より多くの人が利用できる建築空間を提供するためには、計画・設計の段階からリードユーザーを巻き込み共創する、「インクルーシブデザイン」の考え方を取り入れることが望まれる。

ユーザーの望む体験と実際に建築されたものとのギャップ
愛知県新体育館にバリアフリーの大問題 26年アジア大会に影響も
大相撲名古屋場所の会場などに使われる愛知県体育館(名古屋市)の移転新築計画で、バリアフリー(ユニバーサルデザイン)に関する大きな問題が発生している。メインエントランスとなる高さ7.4メートル、49段の大階段にはスロープもエスカレーターもなく、障害者団体などから反発が噴出。バリアフリーの専門家も懸念を示し、5月になって事業者側がスロープなどの設置案を示したが、正面から大きく回り込むことになるなど懸念が残るまま7月の着工に向けて準備が進んでいる。
記事のつづき:愛知県新体育館にバリアフリーの大問題 26年アジア大会に影響も
歌舞伎町タワー・共用トイレ炎上で見えた課題3つ
東急歌舞伎町タワー2階の「ジェンダーレストイレ」が今、話題になっています。このタワーの2階トイレは、廊下に面した同一のトイレ空間内に、女性用トイレ個室(2室)、男性用トイレ個室(2室)、ジェンダーレストイレ個室(8室)、バリアフリートイレ個室(1室)が設けられており、手洗いスペースは共用となっています。多様性に配慮しようとして設けた「ジェンダーレストイレ」の配置や利用者の区分けが、かえって混乱を招いているようです。そこで、東急歌舞伎町タワー2階のジェンダーレストイレの課題について考えてみます。
記事のつづき:歌舞伎町タワー・共用トイレ炎上で見えた課題3つ
誰一人取り残されない社会の実現
これからの建築産業の未来をふまえ、さまざまなユーザーに対して価値を提供するためにインクルーシブデザインの考え方がより重要になると考えられます。また、世界とつながる建築産業において、多様なユーザーを巻き込み、多様なユーザーに開かれた建築体験を届けることが、サステナブルな産業モデルの構築と独自性のある企業価値の創造をもたらすキーファクターとなります。

次の記事ではインクルーシブな取り組みを行う建築業界の事例を紹介します。
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