UXデザインがヘルスケアサービスの継続率に与える影響
エピソード2
Report
:注目が高まるヘルスケアアプリ事例集

【連載第2回】注目が高まるヘルスケアアプリ事例集
当事者参画型の開発モデルがヘルスケアサービスに与える影響の調査
予防・健康づくりの領域(以下、ヘルスケア領域)においては、効果を実感しにくいことや、利用者にとってのペインが小さいことから、サービスの継続率が低いことが課題とされています。
こうした課題に対し、課題発見やコンセプト設計からサービスの意匠部分までの各フェーズでユーザーを中心においた開発を行い、ユーザーの心理を意識したサービス体験を設計する(=UXデザイン)ことで、継続を促す(=健康アウトカムの向上に寄与)ことに貢献できるのではないかと考えられます。
本調査ではこの仮説のもと、ヘルスケアアプリを対象に、UXデザインの観点から、サービス(アプリ)の継続利用に寄与する要因や、サービス設計の現状、またそれらの要因をどのようにサービスへ組み込むことができるのかを調査します。これにより、ヘルスケア領域の課題であるサービスの継続率の向上に対して、UXデザインの考え方を適用することの有用性を明らかにすることを目的とします。
本調査では、以下のリサーチクエスチョンが設定されています。
ユーザーを中心においた開発(UXデザイン)がヘルスケアアプリの継続率向上に寄与するか
ヘルスケアアプリにおけるUXデザインの実践の現状やそれを踏まえた課題はなにか
UXデザインを実践するための課題解決の方向性として何が考えられるか
出典:令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(当事者参画型開発モデルの発展に向けた調査事業)内「当事者参画型開発モデルのようなUXデザインの実践がヘルスケアサービスに与える影響の調査」
UXデザインとリテンションレートとの関係性について
歩いた分だけポイントが付与されるアプリなど、歩数・ポイントはヘルスケアアプリの中で最も利用者が多いカテゴリです。実際に、アプリ全体でみてもアクティブユーザーランキングにおいて50位以内に入るアプリもあり、利用しているユーザーは非常に多いと言えます。

出典:株式会社mitoriz , 令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(当事者参画型開発モデルの発展に向けた調査事業)内「当事者参画型開発モデルのようなUXデザインの実践がヘルスケアサービスに与える影響の調査」
こうしたアプリにおけるUXデザインとリテンションの関係性について整理します。調査では、アクティブユーザー数が20万程度以上の5アプリに加え、比較対象として、アプリの使用によりポイントが貯まる他領域のアプリ1種が選定されました。
以下に、各アプリの特徴を比較した結果を示します。

続いて、各アプリのリテンションレートを比較した結果を以下に示します。

結果をもとに、リテンションに影響を与える要素をUXデザインの観点から整理すると、「インセンティブ設計」「コミュニティ機能」「コミュニケーション機能」「プッシュ通知」「目標設定」などが重要な要素として挙げられます。

出典:令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(当事者参画型開発モデルの発展に向けた調査事業)内「当事者参画型開発モデルのようなUXデザインの実践がヘルスケアサービスに与える影響の調査」
ヘルスケアアプリにおけるUXデザインの実践の現状や課題について
ヘルスケアアプリを提供している事業者に対して行われたUXデザインの実践の現状や課題についてのアンケート調査の結果、以下のことがわかりました。
まず、UXデザインを意識していないと回答した事業者も、開発期間やコスト、人材といった制約により実践できていないケースが多く見られましたが、今後はUXを意識した大幅なアップデートを予定していることがわかりました。
また、ヒアリングを行ったすべての事業者において、UXデザインの専門家 (デザイナー・エンジニア等) をサービス設計やコンセプト設計段階から参加させ、アプリの開発を行っていることが確認されました。
さらに、どの事業者もヘルスケアアプリにはUXデザインが重要であると認識しており、継続利用を促すUXデザインをアプリ内に組み込んでいることが分かりました。

一方で、アプリのコンセプト設計にユーザーの意見を取り入れる際には、対象者として「平均的・一般的なユーザー」を選定しているケースが半数弱と、最も多く見られました。(加えて、別の属性のユーザーと組み合わせるケースも多く見られます)
こうした傾向を踏まえ、継続利用に関する課題についても示唆が得られました。まず、本気で取り組みたい層以外のユーザーは離脱しやすい傾向があり、今後の強化ポイントの一つとなっています。各事業者は、アプリの使い方を習得してもらうためのプロセスの工夫や、コミュニティチーム参加へのレコメンド等を行っているが、本当の無関心層に対するアプローチには限界を感じている状況が見られました。
また、3カ月以内でのユーザーの離脱がボトルネックとなっており、この期間で見切りをつける多くのユーザーを食い止める必要があります。さらに、ユーザーのモチベーション維持にも課題があり、ヘルスケアは健康予防を目的とする性質上、効果を実感しにくく、モチベーションが下がりやすいことが課題の1つとして挙げられています。
加えて、金銭的インセンティブやポイント付与は、初期の段階で興味を向かせたり、参加者を募集したりといった「始める行動変容」には効果が期待できる一方で、その後の継続、「続ける行動変容」には高い効果は期待できないと考えられています。継続利用を促すには内発的動機づけの方が有効であると考られます。
UXデザインの実践がヘルスケアサービスに与える影響
歩数管理以外の健康管理、ダイエット、月経管理のヘルスケアアプリも同様の調査を行った結果、ヘルスケアアプリにおいて、ユーザの利用継続率を高めることが健康アウトカムの向上につながると考えられており、継続率を高める要因のひとつとしてUXデザインの向上が挙げられていることが明らかになりました。

出典:令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(当事者参画型開発モデルの発展に向けた調査事業)内
「当事者参画型開発モデルのようなUXデザインの実践がヘルスケアサービスに与える影響の調査」
まとめ
本記事では、ヘルスケアアプリにおけるUXデザインの影響を、継続率の観点から見ていきました。
その結果、多くの事業者がUXデザインの重要性を認識している一方で、平均的なユーザーを中心に設計しているケースが多く見られました。
また、インセンティブ設計などのUXは利用開始には有効である一方、継続利用には限界があり、モチベーションの維持といった課題が明らかになりました。
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