業務システムにおけるインクルーシブデザインの事例

エピソード4

    Report

    :従業員から使いやすいと喜ばれる業務システム開発におけるUI・UXデザインとは?

    業務システムにおけるインクルーシブデザインの事例

    【連載第4回】従業員から使いやすいと喜ばれる業務システム開発におけるUI・UXデザインとは?


    インクルーシブデザインの考え方は、さまざまな場面で実践されています。
    業務システムや業務環境においても、多様なユーザーに配慮した取り組みが広がりつつあります。本章では、それらの具体的な事例を紹介します。

    コンビニで障害者が活躍する時代へ

    新たな働き手とIT活用が、労働力不足を解決

    NRIの横浜野村ビルでは、オフィス内の置き菓子サービスの実現性検証(以下、サテライト販売)が進められています。

    14階のステアラウンジ(内階段でつながった社員の憩いとコミュニケーション用スペース)では、十数種類のお菓子やドリンクが販売されています。また、各フロアの執務スペースにあるパントリーでも、小規模ながら数種類のお菓子とドリンクが販売されています。

    これらの売場づくりを支えているのが、NRIみらい株式会社の社員である障害者です。週に2回、2人1組で売場を訪れ、商品補充や清掃、フェースアップ(商品パッケージが正面を向くよう配置する)などの業務を行っています。

    障害のある社員がオフィス内コンビニの商品補充や売場管理を行う様子

    ハイブリッドな職場でニューロダイバーシティを支えるインテリジェントツール

    誰もが効率的に作業できるソフトウェアの実現

    WindowsOSやOffice365などの製品では、自閉症や ADHD (注意欠如・多動症)、ディスレクシア (読字障害) など異なる認知機能を持つ人たちを考慮した、ニューロダイバーシティへの取り組みが行われています。

    Microsoft Teamsでは通知や情報を最小限に抑え、集中力を高めるためのさまざまなカスタマイズ機能が用意されています。また、音声読み上げや入力機能は、こうしたユーザーの効率向上を助けるだけでなく、運動機能に制約のあるユーザーや子どもを抱えながら働くなどの制約のあるユーザーのアクセシビリティ向上にもつながっています。

    Microsoft社では、アクセシビリティを最優先とし、継続的な改善活動にも取り組んでいます。

    ニューロダイバーシティに配慮したMicrosoftのアクセシビリティツール例

    文字起こしと翻訳ソフトウェアが多様なコミュニケーションを実現

    障害者サポートから、多言語コミュニケーションへ

    Accentureは、聴覚に障害のある方の社内業務支援を目的とし、音声の文字起こしと翻訳機能を備えたコミュニケーションソフトウェアであるTransCommunicatorを開発しました。従来のソフトウェアでは難しかった専門用語の対応も行っているほか、入力された文章の読み上げ機能も備えています。プロトタイプの段階から障害のあるユーザーに利用してもらい、フィードバックをもらいながら改善を重ねてきました。その後、同時自動翻訳機能が追加され、言語の壁を越えたコミュニケーションを実現。業務だけでなくイベントなどにも活用され、さまざまな人にさまざまな場面で使ってもらえるソフトウェアに発展しました。

    文字起こしと翻訳機能により、多言語コミュニケーションを支援する例

    障害の当事者と作る、インクルーシブな会計ソフト 

    アクセシビリティからインクルーシブへ

    freeeは会計ソフトや人事労務、給与計算などバックオフィス業務のソフトウェアを多く手がけています。

    freeeでは、アクセシビリティの規格順守などWebアクセシビリティ向上を行ってきました。その後、リードユーザーであった視覚障害のあるエンジニアが加わりインクルーシブな開発組織となることで、障害のある方により使いやすいデザインシステムの開発やインクルーシブな設計思想を実現しています。障害の有無にかかわらず幅広いユーザーが使えるソフトウェアとなることで、ターゲットが拡大し、新たな企画を生み出すことができています。

    freeeでは障害の当事者の方へのUXリサーチを行い、企画の仮説検証を行っています。

    障害の当事者とともに開発した、インクルーシブな会計ソフトの例

    デジタルリテラシーの低いヘルスワーカーと作る健康診断アプリ

    住民の健康意識の向上と女性の活躍を同時に達成

    NECでは、インド・ビハール州の糖尿病予防を目的とした健康診断システムを開発しています。

    デジタル教育を受けておらずスマートフォンも持っていない女性ヘルスワーカーでも利用できるよう、画像を多用することでデジタルリテラシーの低い人でも簡単に操作可能なアプリケーションを実現しました。ヘルスワーカーがタブレットで住民の健康診断データを入力することによって、地域住民の健康データが管理でき、健康意識の向上につながっています。また、ヘルスワーカーのITリテラシー向上や仕事へのモチベーション向上にもつながっています。

    NECでは蓄積したデータを利活用し、さらなる事業領域拡大を目指しています。

    デジタルリテラシーの低いヘルスワーカーと作る健康診断アプリの例

    まとめ

    本連載では、業務システムを取り巻く環境の変化から、多様なユーザーに配慮した設計の必要性、そして具体的な設計のポイントや事例までを紹介してきました。

    これまでの業務システムは、特定のユーザーや業務に最適化された設計が主流でしたが、今後は年齢や国籍、身体的・認知的特性など、多様な背景を持つ人々が同じシステムを利用することが前提となります。そのため、誰にとっても使いやすい体験の設計が求められます。

    インクルーシブデザインの視点を取り入れた設計は、より多くの人にとって使いやすいだけでなく、結果として業務効率や顧客体験の向上にもつながります。多様なユーザーとともにつくる業務システムが、これからの企業活動を支えていくと考えられます。

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