観光業界のインクルーシブ事例
エピソード3
Report
:観光業界が取り組むべきインクルーシブデザインとは?

【連載第3回】観光業界が取り組むべきインクルーシブデザインとは?
本記事では、これまでまとめてきたように、今後観光にインクルーシブデザインがさらに求められる背景を踏まえ、国内外のさまざまなインクルーシブ事例を紹介します。
JAL
アクセシブルツーリズムでさまざまな旅を実現
JALグループでは、すべてのユーザーに旅を通じた楽しさや豊かさを提供するための取り組みを続けています。快適な旅行体験の実現に加えて、お子さま連れから身体の不自由な方までさまざまなユーザーが旅行を楽しむことができるよう、アクセシビリティの向上に努めています。
事前に部屋の導線の確認ができるよう部屋の仕様をオンライン上で公開したり、障害を持つ方とそのご家族が一緒に楽しめるアクティビティの提供など、すべての人に開かれたツーリズムを提供しています。

子連れ旅の不安を移動のなかで解決
JALにはママ、パパに寄り添ってお子さま連れの旅をサポートするサービスがあります。空港でのサポートとして、お子さま連れのお客さまが優先的にチェックインできる専用カウンターの設置やベビーカーの貸し出しも行っています。また、機内では、お子さまがフライト中に楽しく過ごせるようなおもちゃを配布したり、赤ちゃん連れのお客さま向けに、ミルク作りのお手伝いや紙おむつのご提供もしています。
旅を通して親子ともに楽しめる体験を提供するために、移動も旅の一部と捉えファミリーに向けてインクルーシブな施策を提供しています。

子どもが旅の途中で飽きないようさまざまなノベルティを用意 JAL
日本ホテル
ホテル全体で取り組むD&I
JR東日本グループのフラッグシップホテル会社である日本ホテル(株)では、一人ひとりが互いに協力しあい、働きがいのある職場づくりを目指す取り組みとしてさまざまな働き方への施策を進めています。
育児・介護と仕事の両立や女性の活躍をサポートする制度、障害者の雇用促進とサポート体制の強化、外国籍スタッフの雇用、ベテランスタッフの継続雇用など、ダイバーシティにも積極的に取り組んでいます。また、従業員の健康管理と健康増進の取り組みを行い、誰もが安心して、自分らしく働ける職場環境を整えます。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)への取り組み 日本ホテル
東京都産業労働局
Accessible Tourism Tokyo (東京都産業労働局)
東京都産業労働局が提供するアクセシブル・ツーリズムポータルサイト。障害を持った人や高齢の人も楽しめる東京の観光情報を「旅行者向け」と「事業者向け」のカテゴリーで日本語、英語で発信。「旅行者向け」には、『誰にでも優しく、どこへでも行ける東京』をコンセプトとして情報が構成され、都内30コースのバリアフリー情報ガイドや宿泊・ショッピング・観光スポット・さまざま交通機関の情報、サポート情報を提供。また、「東京都の事業者向け」には、『選ばれる東京を目指して』をコンセプトに、事業者がアクセシブル・ツーリズムを推進する際に参考になる東京都の推進サポート情報やアクセシブル・ツーリズム対応の好事例を紹介しています。

Accessible Tourism Tokyo 東京都産業労働局(2023)
Vision of The Fjords(海外事例)
水上の旅をあらゆる人へ提供する
ノルウェー西海岸にある世界的に有名な観光地であるフロムは、フェリーが交通システムの一部を形成しています。この美しい景観と移動手段にインクルーシブデザインを用いた新しいボートを開発し、段階的なイノベーションを実現しました。
このボートは先鋭的でパイオニア的なデザインで、急速に現代の象徴となりつつあります。車いすやベビーカー、移動に不自由のある方でも、他の乗客と一緒に乗船できるよう、広い通路が設けられています。すべての出入り口には、スロープと手すりが設置されています。船内にはパノラマウィンドウがあり、誰もが並んで景色を楽しむことができます。メインデッキからトップデッキへは、誰でも簡単に移動ができます。通路に隣接する座席は、色や素材を変えて通路を強調し、広々とした家具と明確なウォーキングゾーンで、乗客は自分の位置を確認することができます。

Air Canada(海外事例)
シームレスな家族旅行を楽しむ方法の解説
エア・カナダは一般的なフライトの解説に加えて、家族旅行を保護者の方にとってより簡単に、お子様にとってより楽しくするさまざまな方法を解説しています。出発前のチェックリストから、ベビーカー利用時の特別なリクエスト、子ども用の機内食の手配や、アシストが必要な方に向けての事前のチェックリストなど旅行が始まる前に確認が必要な項目に関して細かく記載しています。
また、長いフライト中に少しでもお子様が飽きてしまわないよう、キッズ専用機内食メニューや旅行が楽しくなるグッズの配布などを行っています。細かな配慮により家族旅行をシームレスに繋ぐ航空会社のおもてなしの例と言えます。

Scandic Hotels(海外事例)
多様な視点に立つことから生まれるアクセシビリティ
スカンディック・ホテルズ・グループは、6カ国に約280軒のホテルネットワークを持つ北欧最大のホテルオペレーターです。同社の「Hotels for All」コンセプトは、すべてのゲストがアクセスしやすくなるよう、客室、レストラン、サービスの改善を実施することです。
最初のオスロ空港ホテルの開発では、障害のあるホテルの宿泊客や障害者団体のメンバーがインサイト段階のリードユーザーとなり、その経験を新しいホテルを建設する際のスケールアップや改善に役立てました。また、スカンディックホテルの役員やスタッフも、リードユーザーと同じ宿泊体験を経験することで、ユーザーインサイトを得ることができました。現在、159ポイントまで拡張されたチェックリストでは、あらゆる人を包摂することを目的としグループ内ホテルへの義務化、また他のホテルもこのアプローチを採用しています。

Flytoget – new Airport Express train(海外事例)
多様なユーザーの利用を想定した車両デザイン
Flytogetは、多くの旅行者にとってノルウェーとの最初の出会いとなる重要な交通機関です。車両の老朽化にくわえ、すべてのユーザーにとって利用しやすいサービスの開発の必要性を感じていた同社は、初期段階から包括的なデザインを用いて、競合とは一線を画す旅行体験を作り続ける決断をしました。
新型車両は、より広い座席、より静かな車内、より大きな窓を備え、すべての乗客にとってより良い全体的な体験を提供します。また、自動ドアやフラットな床により、高齢者や障害者の方に加え、ベビーカーを利用する方、熱いコーヒーを片手にスーツケースを持った方など、すべての乗客が安全に移動ができる工夫がされています。さらに、中間車には折りたたみ式の座席とバリアフリーのトイレが設置され、全車両に聴覚障害者用の音声誘導案内を行うなど、特別な設計になっています。また、乗車前に空席のある車両を案内する、ノルウェーで初めての列車です。

まとめ
本記事では、国内外のさまざまなインクルーシブデザインの事例を紹介してきました。
それぞれの手段は異なるものの、共通しているのは、ユーザーの課題に向き合うことが結果としてより多くの人にとって使いやすい体験につながっている点です。
今後も、こうした事例を参考にしながら、より多くの人が安心して旅を楽しめる社会が広がっていくことが期待されます。
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