インクルーシブ事例
エピソード3
Report
:超高齢社会にデザインはなぜ必要か?

【連載第3回】 超高齢化社会にデザインはなぜ必要か?
超高齢社会は、医療や介護の課題だけでなく、人々の暮らし方や価値観、サービスのあり方そのものに変化をもたらしています。そのなかで、多様な人々のニーズに目を向け、新たな価値を生み出す取り組みも広がっています。
本記事では、高齢者や障害者をはじめとする多様な人々の課題やニーズに着目し、サービスや仕組みの改善、新たな価値創出につなげている事例を紹介します。これらの事例は、超高齢社会を単なる課題として捉えるのではなく、より良い社会や新たなイノベーションを生み出す機会として捉えるヒントを与えてくれます。
トラベルwithじぇぷと
シニアや障害者の方でも普通に旅行を楽しめる旅行企画
トラベルwithじぇぷとは、医療・介護・リハビリなどの専門職が同行することで、シニアや障害者の旅行をサポートする旅行企画です。
シニアの方や障害者の方が旅行の際に抱く不安や心配事を取り除き、旅行のワクワクを楽しんでもらうことを目的としています。医療・介護・旅行の専門家であるスタッフが同行し、旅行のプランニングはもちろん、ホテルや介護タクシーの手配、福祉用具の手配、移動・食事・入浴などの介助、ストレッチやマッサージなど、介護全般にわたるサポートを提供しています。
高齢や障害を理由に旅行を諦めるのではなく、誰もが当たり前に旅行を楽しめる環境づくりを目指している点が特徴です。旅行を不安なく楽しめることで、「次の旅行まで、また頑張ろう。」という前向きな気持ちにつながることを目指し、サービスを提供しています。

ファミリーネットワークサービス
高齢者の資産を守る・サポートする金融サービス
ファミリーネットワークサービスは、株式会社SMBCファミリーワークスが提供するサービスです。
「おかね」「健康」「生活」の3つの観点でリスクを“見える化”し、家族間の不安解消につなげるスマートフォン向けアプリです。利用者と家族の間のコミュニケーションを通じて、具体的に将来の「備え」を検討できるサービスとなっています。
将来必要となる資産の診断コンテンツや、保険の請求漏れ防止をサポートする機能を搭載し、メガバンクとしての安心感や利便性を提供しています。金融を含めたライフパートナーとして、多くの家族の不安を解消することを目指しています。

無人宅配ロボ「DeliRo」
目と音声でのコミュニケーションも搭載した自動走行ロボット
DeliRoは、自動運転技術を活用した自律移動配達ロボットです。
ZMPの自動運転コンピューター『IZAC』を搭載し、カメラやレーザセンサーを駆使して周囲環境を360°視認しながら自動で走行します。最大速度は時速6kmで、安全に走行することができます。
運ぶ荷物や大きさに応じて、1BOX・4BOX・8BOXの3種類のタイプから選ぶことができ、最大積載量は50kgです。配送物や飲料など、さまざまな利用シーンを想定しています。
また、DeliRoはモビリティの前方に目が付いており、通行人などとアイコンタクトを取ることが可能です。さらに音声を発することもでき、目と声の両方によるコミュニケーションを実現しています。まるで人と人とがコミュニケーションするかのように、利用者や周囲の人と関わることができる点が特徴です。

一人用モビリティ「WHILL」
日常にそっと馴染む新しいスタンダードなモビリティ
WHILLは、自転車や自動車よりも安心して利用できる、新しいスクーターブランドです。
WHILLには、歩道を走れるスクーターの「WHILL Model S」、折りたためる軽量モデルの「WHILL Model F」、段差や悪路が多い場所をよく走る方におすすめの「WHILL Model C2」の3つのラインナップがあります。
WHILLは、どのラインナップも既存のスクーターとは異なる、スタイリッシュなデザインが特徴です。一人ひとりの日常にそっと馴染む新しい「定番」となることを目指し、新しい乗り物として誕生しました。
また、WHILLはスタイリッシュさだけでなく、機能面にもこだわっています。モデルごとに違いはありますが、小回りの利く設計や直感的な操作が可能であることに加え、買い物の際に便利なカゴが付いているなど、日常生活で使いやすい工夫が施されています。

見守りデバイス「Hello Light」
電球を変えるだけのシンプルな見守りデバイス
Hello Lightは、LEDの点灯・消灯を通信で知らせることができる世界初のIoT電球です。
見守りを開始するために、さまざまな工事やWi-Fiの設置は必要ありません。電球をHello Lightに交換するだけで、誰でも簡単に見守りを始めることができます。
基本的な機能は2つあり、点灯時に電球からお知らせが届く「点灯検知」と、一日中点灯や消灯の動きがない場合にお知らせが届く「期間検知」です。
Hello Lightには電球内部にSIMが内蔵されており、点灯・消灯時に基地局が通信を受け取り、登録されたPCやスマートフォンなどに通知が届く仕組みとなっています。
最もシンプルな見守り・防犯を実現するデバイスとして活用されており、現在は日本国内を含め世界84カ国で利用されています。

排尿予測デバイス「D free」
医療施設から個人まで幅広く活用される排尿予測デバイス
D freeは、必要なタイミングで排尿をお知らせする排尿予測デバイスです。
在宅介護向け、個人利用向け、医療・介護施設向けの3つの利用パターンがあり、それぞれに適したプランで利用することができます。
排尿の予測は、デバイスを下腹部に取り付け、搭載された4つの超音波センサーで膀胱の膨らみを常時計測することで行われます。その結果はアプリ上で10段階で表示されます。
D freeでは、いつでも・どこでも計測が可能で、尿の溜まり具合をリアルタイムで可視化することができます。また、排尿を事前に知らせる「そろそろ通知」や、排尿失禁を知らせる「でたかも通知」の機能も備えています。
さらに、ケアの記録や分析もアプリ上で容易に行うことができ、在宅介護から医療・介護施設まで幅広い場面で活用されています。

オンライン診療システム「curon」
全国6,000を超える医療機関で活用されているオンライン診療システム
curonは、導入費・月額利用料が0円で利用できるオンライン診療サービスです。
導入から運用までしっかりとサポートが行われるため、初めて導入する場合でも不安なく利用を開始することができます。
予約管理やビデオ通話によるオンライン診療はもちろん、薬局への処方箋連携や、お薬の配送サポートまでの業務フローを担う機能が搭載されています。全国6,000以上の医療機関で導入されており、多くの現場で活用されています。
また、2020年には日経優秀製品・サービス賞、2021年にはMM総研大賞スマートソリューション部門ヘルスケアICT分野で最優秀賞を受賞しています。さまざまなメディアにも掲載されており、今後のさらなる発展が期待されるサービスです。

セブン銀行ATM
健常者から多様な方まで幅広い方にとって使いやすいATM
セブン銀行ATMは、「誰かに使いやすいから、みんなに使いやすい」という考え方のもと設計されています。
2019年にセブン銀行は、「いつでも、どこでも、だれでも、安心して」というビジョンを掲げ、ATMのデザインや機能を一新しました。音声ガイダンスシステムの導入により、視覚障がいのある方も安全かつ便利に利用できるコンビニATMとして注目を集めました。
また、現在はセブン銀行ATMを設置することで、ショッピングモールや複合施設の集客力向上にもつながるとされており、設置台数も大幅に増加しています。
マイノリティが抱える課題やニーズに着目することで、結果としてより多くの人にとって使いやすいサービスを実現しています。マイノリティの抱える問題意識をもとに、マジョリティに対しても新たな価値を創出する、インクルーシブデザインの好事例といえます。

AGENT伊予銀行
地銀がデジタルが苦手な方も取り込む全国初アプリで活路
単なる業務のデジタル化ではなく、顧客体験を軸に企業改革につなげている企業が、愛媛県にある地方銀行の伊予銀行です。
伊予銀行では、口座開設などの申請手続きを店頭のタブレット端末で顧客自ら入力できるようにした「店舗受付AGENTアプリ」を導入し、業務改善を進めています。デジタルに不慣れな方にも配慮しながら、ユーザー・銀行・行員の三方良しを実現する取り組みとして注目されています。
アプリ導入により、顧客の待ち時間や書類作成時間を大幅に削減し、行員の事務作業も約80%削減しました。これまで45分かかっていた口座開設時の入力時間は約6分に短縮され、通帳・カード発行まで含めても約10分で手続きが完了するようになりました。

RehaVR
VRを活用し、いつものリハビリから時間を忘れるリハビリへ
「散歩をする」「旅行に行く」といった、日々のリハビリテーションにおいて活動的な生活を取り戻すためのモチベーションとなりうる行動を、高齢者の方にも楽しんで行っていただけるよう開発されたのが、VRヘルスケアソリューション「RehaVR」です。
RehaVRは、VRヘッドマウントと足こぎペダルを組み合わせることで、転倒リスクを考慮した椅子に腰掛けた状態でも利用できるVRリハビリを実現しています。
ペダルに装着したコントローラーからの情報をもとに、VRヘッドマウントに映し出される映像がリアルタイムで変化します。トレーナー側でも利用者の状態を確認できるため、VRヘッドマウントを装着したまま安全にトレーニングを行うことができます。
また、各地の観光都市や自然の景色、秋田犬との散歩など、楽しくリハビリを続けるためのコースが豊富に用意されています。

福岡銀行
「みんなに優しい銀行」の実現へ向けた「ユニバーサルアクション」の実行
ふくおかフィナンシャルグループのコアバンクとして、福岡県内を中心に九州全域に店舗を展開する福岡銀行では、「みんなに優しい銀行」の実現に向けた取り組みを進めています。
お子様連れの方、高齢者、外国人など幅広い利用者を対象に、事業のさまざまな接点で誰にでも分かりやすい工夫を行うことで、来店される方が快適にサービスを受けられる環境づくりを行っています。
福岡銀行では、ユニバーサルデザインに「行動(アクション)」の考え方を加えた「ユニバーサルアクション」を推進しています。設備やサービスの改善だけでなく、行員一人ひとりの対応も含めて、誰もが利用しやすい銀行を目指しています。
具体的には、車椅子利用者への配慮、高齢者に優しいサービス設計、ユニバーサル対応ATMの導入、外国人利用者への対応に加え、多様な利用者への理解を深めた行員によるサポートなど、多面的な取り組みを実施しています。

中国のシニア向け趣味特化SNS「Hongsong(紅松)」
超高齢社会に向けたシニア向けSNS
Hongsong(紅松)は、中国の定年退職者向けに提供されている趣味特化型のSNSです。歌や絵画、読書、書道などを楽しめるオンラインコミュニティを提供しており、シニア世代の学びや交流の場として活用されています。
また、ライブストリーミング機能やサブチャンネル、パーティー機能などを備えたグループコミュニティ「xiaozhan(小站)」も提供しており、利用者同士が共通の趣味を通じてつながることができます。
Hongsongは、高齢者の新たなニーズを把握しながらサービスの改善を続けており、その取り組みが事業成長にもつながっています。
このサービスは、2050年までに総人口の3分の1以上が60歳以上になると予測される中国の高齢化社会を背景に開発されました。

まとめ
超高齢社会の進行に伴い、移動、健康、金融、コミュニケーションなど、さまざまな領域で新たなサービスや仕組みが求められています。
今回紹介した事例は、高齢者の不便や課題を解決するだけでなく、安心して暮らすこと、楽しみを持つこと、人とつながること、自分らしく生活することを支える取り組みです。
高齢者を含む多様な人々の視点を取り入れたデザインは、これからの社会における新たな価値創造につながっています。
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