超高齢化社会を取り巻く現状
エピソード1
Report
:超高齢社会にデザインはなぜ必要か?

【連載第1回】 超高齢化社会にデザインはなぜ必要か?
多様な人に優しい インクルーシブデザインとは?
インクルーシブデザインとは、ユーザーを中心としたデザインです。能力、言語、文化、性別、年齢、その他の人間の差異を含む人間の多様性をデザインプロセスの一部として考慮します。インクルーシブデザインはイノベーションを生み、新しい市場を開拓し、顧客や市民とより豊かな関わりを生み出します。
CULUMUでは、高齢者や障がい者、外国人やマタニティなどのリードユーザーとの共創型のデザインにより人に優しいデジタルと事業機会を創出します。
これからの日本の課題を把握しつつ、事業内でさまざまなユーザーに対して価値を提供するためにインクルーシブデザインの考え方がより重要になると考えられます。高齢者の包摂を意識したサービスづくりが、未来の企業価値の向上と事業の独自性をもたらすキーファクターとなることが予想できます。
超高齢化社会への突入
日本は、世界の中でも最も高齢化が進んでいる国の一つです。高齢化率はすでに世界トップ水準に達しており、今後もその傾向は続くと見られています。

高齢化が進む社会で、移動可能性は確実に下がっている
令和5年版高齢社会白書による試算では、2035年までに高齢者(65歳以上)の人口が約3割になるといわれています。これは、サービスユーザーの約3割が高齢者になることを意味しています。世代別金融資産においても無視できないセグメントである高齢者に対する施策として、高齢者間のデジタル格差、PC・スマートフォンの利用比率などを考慮したインクルーシブな取り組みが求められます。

多様な課題を抱える方たち
964万人以上、つまり日本人の約7.6%の人が何かしらの課題を抱えています。さらに、そのうちの約95%にあたる900万人以上が、施設や病院への入所、入院をせずに生活しています。

私たちの身の回りには気が付きづらいさまざまな多様性があります
60代以上のスマホ保有率は8割と、多くの人がスマホを持っています。その一方で、日常的に利用しているのは約50%にとどまります。利用用途も、LINEなど家族との連絡手段にとどまります。
出典:モバイル社会研究所 「モバイル社会白書」 (2022)
日本語が得意でない外国人の36.8%が「多言語対応している」ことを決め手に銀行を選択しています。この割合は、「サービス内容」を決め手と回答した割合とほぼ同等です。
出典:WOVN.io「在留外国人が生活サービスに加入する際の情報源と言語について」(2022)
インターネットの利用率は年々高まっているものの、障がい者の約40%は日常的に利用できていません。
出典:総務省「障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査研究」(2012)
高齢化の進行に伴い、高齢者や障がいのある方が増加することで、生活の中で何らかの課題や制約を抱える人の割合は高まっています。こうした人々は、2035年には全体の約45%に達すると予測されています。

出典:「公益財団日本賃貸住宅管理協会 あんしん居住研究会資料」
超高齢社会におけるデザインのスコープと社会課題
これまでのユーザーのスタンダードが大きく変わるなか、日本社会の変化に対応するサービス・仕組みのデザインが必要になっています。行政だけでなく、民間からの社会保障づくりがより重要となっています。
超高齢社会におけるデザインの役割は、製品やサービスの改善だけにとどまりません。社会保障を基盤としながら、医療・介護分野におけるサービスのイノベーション、さらには地域資源を活用したまちづくりへと広がっています。
また、その実現には市場ニーズに根差したデジタル活用や、医療・介護・NPO・民間企業によるオープンイノベーション、地域資源の活用など、広義のデザイン(サービスデザイン)の視点が求められます。

出典:「日本総研:超高齢社会における国づくり」を加工して作成 (Internet Archive)
これまでの日本と超高齢社会に求められるサービスの変化
高齢化の進展は、人口構造だけでなく、人々の健康状態や価値観、ライフスタイルにも大きな変化をもたらしています。これまでの「平均的なユーザー」を前提とした製品・サービスではなく、一人ひとりの違いやニーズに応じた設計が求められる時代になっています。

出典:『「エイジノミクス」で日本は蘇る(NHK出版新書」』を加工して作成
通信事業・銀行・交通など様々なインフラサービスにおいても、高齢化を考慮したサービスづくりが必要になってきているといえます。

一方でDXが高齢者のUXに影響
DXに関する取り組みを進めている国内企業は約56%にのぼりますが、その目的は「生産性向上」が約75%と最も多く、「顧客体験の創造・向上」は約32%にとどまっています。一方で、セルフレジやオンラインサービスなど、デジタル化されたサービスに触れる機会は増え続けています。超高齢社会においては、効率化だけでなく、多様な人々が利用しやすい体験をどのように設計するかが重要になっています。
出典:2022年版の情報通信白書
深まる社会の分断
DXやデジタル化が進む一方で、ICTを十分に活用できていると感じる人ばかりではありません。特に高齢者においては、デジタルサービスへのアクセスや利用経験に差があり、デジタル化の進展が新たな格差につながる可能性があります。

出典:高齢者会ラボ:第3回ICT活用による業務効率化に関する調査 Internet Archive
高齢化が進む欧州では、銀行の急速なデジタル化や窓口業務の簡素化に対して、議論が起きています。
スペインでは、金融サービスのデジタル化が進む一方で、対面でのサポートを求める高齢者が取り残されているという問題が顕在化しました。スペインの元泌尿器科医、カルロス・サンフアンさん(78)が金融アプリの利用に苦労し、銀行に対して親切なサービスを求める運動をオンラインで開始したことをきっかけに、多くの共感が集まり、銀行の対応を見直す動きにもつながっています。
出典:アングル:デジタル化急ぐ銀行に「待った」、欧州高齢者の反乱 Reuters(2022) Internet Archive
このような事例から、急速なデジタル化の進展の中で、一部のユーザーがサービスから排除されてしまうリスクがあることが分かります。一方で、デジタル化そのものは依然として重要な取り組みであり、DXの推進は今後も不可欠です。
だからこそ、誰一人取り残さない形でデジタル化を進めることが、これからの金融サービスにおいて重要になっていくといえるでしょう。
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