多様な人を包摂するスマホアプリ

エピソード3

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    :デジタルバンキングから考えるシニア・高齢者に優しいスマホアプリをつくるには?

    多様な人を包摂するスマホアプリ

    【連載第3回】 デジタルバンキングから考えるシニア・高齢者に優しいスマホアプリをつくるには?


    多様な人を包摂するシンプルなスマホアプリの必要性

    超高齢化社会を迎えようとしている日本において、金融機関はデジタルを活用した経営力強化を推進しています。しかし、シニア世代などデジタル活用の難しいお客様にとって使いづらいサービスは、お客様の不満を招くだけではなく、企業にとっても機会損失につながります。
    さらに、シニア世代の視点で使いたくなるスマホアプリの体験を追究することは、実は若者など幅広い人たちにとってもうれしい体験につながる可能性があります。

    金融機関が進めるデジタル戦略と、シニア世代のスマホ利用の日常化が重なり、誰もが利用しやすいバンキングアプリ(幅広いユーザーを包摂するスマホアプリ)へとつながる流れ図

    中国では、国家主導でシニア世代に配慮したスマホアプリのガイドラインが示されています。ガイドラインを受けて大手サービス事業者はシニア世代に向けたモードを提供しはじめています。大手ファストフードチェーンのケンタッキーフライドチキンで提供しているシニアモードは、広告の少なさやシンプルさが若者にも人気を集め、幅広い世代に支持されています。

    広告が少なくシンプルに設計された、中国のスマートフォンアプリ(ケンタッキーフライドチキンなど)のシニアモード画面の例

    既存バンキングアプリのユーザビリティ調査

    シニアにも使いやすいアプリのあり方を検討するために、既存バンキングアプリのユーザビリティ調査を行いました。具体的な調査内容としては、インタビュー結果や中国のアプリガイドラインを参照し、シニア目線で既存のバンキングアプリのユーザビリティを調査し、課題や改善ポイントを抽出しました。バンキングアプリを提供している金融機関を中心に、都市銀行3行、ネット銀行2行、地方の金融機関2行の合計7行の金融機関を対象に調査を実施しました。それをもとに、バンキングアプリのデザインガイドラインを作成しました。

    デザインガイドライン

    COLOR: メインのサービスカラーに、暖色を使用しています。

    デザインガイドラインで定義された、オレンジのメインカラーやグレー、赤、緑などの配色一覧図

    TYPOGRAPHY: 最小文字サイズを16pxに設定し、最大文字サイズは30pxまでとしています。通常のアプリでは、タイトルの文字サイズが本文よりも大きいことが一般的ですが、シニア世代の読みやすさを意識し、本文のテキストサイズの方が大きくなるようなデザインとしました。

    最小16pxから最大30pxまでの文字サイズと、本文をタイトルより大きく配置する読みやすさに配慮したレイアウトのサンプル図

    ICON: 一般的に認識されているアイコンのみを使用し、シンプルなデザインにしています。

    矢印やホーム、マイページなど、一般的に認識されているシンプルなアイコンのサンプル図

    アプリの基本原則

    必要な機能のみに絞る

    必要な機能のみに絞ることで、直感的な操作と操作しやすさを向上することができます。ユーザーがやりたいことにフォーカスでき、迷うことなく達成することができます。

    なるべくひとつのページに1アクション

    シニア世代は指の動きが低下するため、1画面1アクションにすることで、誤操作のリスクを低減することができます。

    必要な機能のみに絞るレイアウトの比較図と、金額入力から振込確認へと進む「1ページに1アクション」の画面遷移図

    暖色を採用する

    寒色より、暖色はシニア世代に認識しやすい色だと言われています。
    シニア世代は視力の低下により、色の区別がしづらくなります。暖色を採用することで、文字やアイコンがはっきりと見やすくなります。

    レイアウトの動線をシンプルに

    シニア世代にとって、Z型のような複雑なレイアウトは、混乱を招きやすくなります。上下の視線の動きのみにすることで、アプリ内の動線をシンプルにすることができます。

    視認性を高めるための「暖色を採用する」イメージ図と、動線を明確にする「レイアウトの動線をシンプルに」の構成図

    アイコンにテキストのラベルを併せて表示する

    視覚的に情報や機能を理解してもらうため、アイコンは一般的に認識されているアイコンのみを使用し、シンプルなデザインにしています。ただし、シニア世代はアイコンの意味を理解しにくい場合があるという懸念があるため、アイコンにテキストラベルを併用することで、アイコンの意味を補足するようにしています。

    ボタンの大きさとクリック可能領域を広くする

    シニア世代は手の震えや指の乾燥によってタッチ操作が難しい場合があるため、ボタンの大きさとクリック可能領域を広くしています。
    また、フリックやスワイプなどの動作は入れず、なるべくクリックのみのシンプルな操作のみにしています。

    アイコンにテキストラベルを併記する画面例と、ボタンの大きさとクリック可能領域を広く確保した操作画面の設計図

    まとめ

    シニア世代にとって使いやすいスマホアプリを考えることは、特定の世代だけのためではなく、より多くの人にとって使いやすいサービスを考えることにもつながります。
    本記事で紹介した工夫は、シニア世代だけでなく、スマートフォン操作に不慣れな人や、金融サービスに不安を感じる人にとっても有効です。
    金融アプリの設計では、高機能化だけを目指すのではなく、ユーザーが安心して迷わず使えるシンプルな体験をつくることが重要です。

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