金融業界を取り巻く現状

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    :デジタルバンキングから考えるシニア・高齢者に優しいスマホアプリをつくるには?

    金融業界を取り巻く現状

    【連載第1回】 デジタルバンキングから考えるシニア・高齢者に優しいスマホアプリをつくるには?


    近年の金融業界では、キャッシュレス化が急速に進んでいます。その背景には、少子高齢化に伴う深刻な労働力不足があります。
    労働供給の担い手がこのまま減少していくと、労働需給のギャップが拡大し、2030年には約341万人、2040年には約1,100万人の労働供給不足が発生すると試算されています。これは景気に左右される一時的な労働力不足ではなく、構造的・慢性的な労働供給不足であり、日本社会にとって深刻な問題となりえます。

    2030年およ2040年には1,100万人の労働供給不足が見込まれることを示す、2022年から2040年までの労働需要・労働供給・供給不足の推移グラフ

    出典:リクルートワークス研究所

    政府が行う貨幣の製造や金融機関の管理するATMの導入・維持、店舗・商業施設のレジの設備導入や締め作業など、現金インフラを維持するには莫大なコストが発生しています。日本においてこうしたコストに対する課題意識は、今後ますます高まっていくと考えられます。

    年間約1.6兆円の維持コストが発生している現金決済インフラの直接的な社会コスト(年間)の構造と各部門(印刷局、銀行、ユーザー等)のコスト内訳図

    出典:経済産業省

    バブル以降、金融機関の統廃合が進み、各金融機関が実店舗を大幅に削減しました。
    現在、労働力不足や経営力強化を目指し、各金融機関は積極的にデジタル活用を進めており、
    2020年以降、店舗削減の流れはさらに加速しつつあります。

    金融機関の実店舗数の推移を示すグラフ

    出典:東洋経済オンライン

    ATMの点検や現金輸送には、年間2兆円のコストがかかると言われています。
    多くの金融機関はATM台数を縮小させる方針をとっていて、2019年以降、ATM数は約1万台が減少しています。
    その一方、セブン銀行のようにATMを収益源として拡大を進める金融機関もあります。

    1992年から2022年までのATM設置台数の推移グラフと、1970年代の無人窓口機、現代の新型ATMやATMコーナーのイメージ写真

    出典:読売新聞オンライン

    2022年のキャッシュレス決済比率は堅調に上昇し、36.0%(111兆円)となりました。その内訳は、クレジットカードが30.4%(93.8兆円)、デビットカードが1.0%(3.2兆円)、電子マネーが2.0%(6.1兆円)、コード決済が2.6%(7.9兆円)でした。
    主要各国のキャッシュレス決済比率は40%を超えており、日本政府は2025年までに40%、将来的には80%に引き上げることを目標にしています。

    2022年のキャッシュレス比率は36.0%に達したことを示す、2010年から2022年までのクレジット、デビット、電子マネー、コード決済の比率と決済額の推移グラフ

    出典:経済産業省_Internet Archive

    2010年代半ば以降、金融ビジネスにおいて「フィンテック(FinTech)」と呼ばれる、ITを活用した革新的な金融サービスを提供するプレーヤーが多数出現しています。これらのサービスは利便性と低コストなどを武器に、多くの消費者に受容され、他業態からの参入を伴うマーケットの多様化、複雑化をもたらしました。こうしたフィンテックを巡る一連の動きは「金融におけるデジタル革命」「金融サービスの民主化」として捉えることができ、金融庁をはじめ世界の金融監督当局は、フィンテックの活用に向けた金融法制の整備や金融イノベーションの支援等を進めています。

    主要なフィンテック決済・送金、個人資産運用、仮想通貨、融資、保険、ソーシャルレンディングなど、様々なプレイヤーが覇権を争うフィンテックカオスマップ。PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAY、pring、メルカリなどのスマホ決済サービスのアイコンが並ぶスマートフォンの画面

    出典:フィンテックカオスマップ MASTAN(2019)、進化するスマホ決済サービス、デジタル給与払いの検討加速 Business Insider(2022)

    シニア世代のスマホ利用の現状とは?

    令和5年版高齢社会白書による試算では、2035年までに高齢者(65歳以上)の人口が約3割になるといわれています。これは端的にいって3割のユーザーが高齢者になることを意味しています。世代別金融資産においても無視できないセグメントである高齢者に対する施策として、高齢者間のデジタル格差、PC・スマートフォンの利用比率などを考慮したインクルーシブな取り組みが求められています。

    2022年の29.0%から2035年には33%以上へ、日本人の約3分の1が高齢者(65歳以上)になることを示す高齢化の推移と将来推計の円グラフ

    日本の高齢者のスマホ所持率は、年々増加傾向にあります。
    モバイル社会研究所の調査によると、2022年時点での高齢者のスマホ所有率は60代で90%超、70代でも70%に達しました。
    3Gのサービス終了の影響もあり、多くのシニアがフィーチャーフォンからスマートフォンに移行しています。
    今後は、高齢者もスマートフォンを使いこなす時代になると言えるでしょう。

    2015年から2022年にかけて、60代のスマホ所有率が90%超、70代が70%に達したことを示すスマートフォンとフィーチャーフォンの所有率推移グラフ

    出典:モバイル社会研究所(2022)

    しかし、それでもシニア世代のスマホ利用率は半数程度にとどまります。スマートフォンを「よく利用している」と回答した60代は約55%、70代以上では約25%にとどまっています。
    自分の生活に必要ないと感じていたり、使い方のわからない高齢者が多く、スマートフォンを持っていても持ち歩いていなかったり、電源の切れた状態で放置されているなどのケースも少なくありません。

    高年齢別のスマートフォン・タブレット利用状況グラフ。60代〜70代以上のシニア世代において、「よく利用している」人の割合が半数程度にとどまることを示している。

    出典:総務省

    総務省が2021年6月に発表した「通信利用動向調査」によると、80歳未満の世代はインターネット機器として、スマートフォンを最も活用していることが分かりました。
    スマートフォン向けのウェブページやアプリは、シニア世代の使いやすさやニーズを意識して設計・開発する必要が高まっています。

    60代〜70代のインターネット機器利用率グラフ。80歳未満のシニア世代において、パソコンよりもスマートフォンの利用率が高いことを示している。

    出典:Yahoo!ニュース

    まとめ

    金融業界では、労働力不足や現金インフラ維持コストの増大、店舗・ATMの削減、キャッシュレス化の進展などを背景に、デジタル化が加速しています。
    一方で、シニア世代の人口は今後さらに増加し、スマートフォンを利用する高齢者も増えています。しかし、スマートフォンを所有していても十分に使いこなせていない人も多く、デジタルサービスの設計にはシニア世代の使いやすさや安心感への配慮が求められます。
    金融サービスのデジタル化が進む中で、誰もが安心して利用できるデジタルバンキング体験をつくることが重要になっています。

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