シニア世代のデジタルバンキング利用実態調査
エピソード2
Report
:デジタルバンキングから考えるシニア・高齢者に優しいスマホアプリをつくるには?

【連載第2回】 デジタルバンキングから考えるシニア・高齢者に優しいスマホアプリをつくるには?
シニア世代にもデジタルバンキングは広がりつつあります。
全国銀行協会の調査によると、60〜79歳のデジタルバンキングを使っている人の割合は、PCの場合、全世代平均を上回っています。
しかし、スマホアプリの場合、全世代平均を大きく下回ることが分かりました。
このことから、シニア世代は必ずしもデジタルバンキング全般に消極的なわけではなく、スマートフォンを使ったデジタルバンキングに難しさがあると考えられます。

出典:全国銀行協会
インタビューで知るシニア世代とデジタルバンキング
調査対象者
シニア世代を対象にデジタルバンキングの利用意向・実態を調査
年代・性別: 60歳以上の男女
人数:15名
調査場所:東京(CULUMUオフィス)
調査方法: デプスインタビュー・行動観察
時間: 90分/人
調査項目
どのようなスマホアプリを使っているか
銀行に行く頻度や目的
デジタルバンキングの利用有無・利用意向・利用している機能
今回の調査では、年代問わず高いITリテラシーを持ち、若い世代同様に金融アプリを使いこなす人もいる一方、「金融アプリを使ってみたい」という気持ちはあるものの、利用に難しさを感じるシニア世代もみられました。

金融アプリは、設計や開発の工夫を加えることで、より多くの人にとって使いやすくなる可能性があります。
インタビューから見えた3つの課題
インタビューの結果、シニア世代におけるデジタルバンキング利用には、大きく3つの課題が見えてきました。
1つ目は、「使い方を知りたいのに、教えてもらえる機会がなかなかない」という点です。
2つ目は、「スマホアプリは若者向けなので、使えなくても仕方がない」と諦めてしまっている点です。
3つ目は、「文字が見づらい」「言葉の意味がわかりづらい」といったことから、使っていて不安に感じるという課題です。
1.使い方を知りたいのに、教えてもらえる機会がなかなかない
まず、インタビューから見えてきたのは、使い方を知りたいという意欲がある一方で、それを学ぶ機会があまりないという課題です。
例えば、「行員さんにアプリの使い方を聞きたくても、『来店予約してください』と返されそうで気軽に聞けない」といった声がありました。サポートを受けたい気持ちはあっても、実際にはハードルを感じてしまうケースが見られます。
また、「FAQでは知りたいことしか教えてくれないが、人であればこちらの意図を汲み取って教えてくれるので安心できる」といった意見から、人を介した情報提供が安心感を向上させることがうかがえます。
さらに、「銀行のアプリの使い方は、家族ではなく行員に聞きたい。専門家の方が安心できる」といった声もあり、専門家から直接教えてもらえる環境が求められていることが分かります。
さらに、「銀行のアプリの使い方は、家族ではなく行員に聞きたい。専門家の方が安心できる」といった声もあり、専門家から直接教えてもらえる環境が求められていることが分かります。
一方で、「銀行員に勧められた説明会をきっかけにアプリを使い始めた」という事例もあり、適切な機会が提供されれば利用につながる可能性も見えてきました。
このように、シニア世代においては「学びたい」という意欲に対して「学べる機会」が十分に提供されておらず、それがデジタルサービスの利用をためらう一因になっていると考えられます。
重要な情報だからこそ、安心して使い始めたい
デジタルバンキングでは自分の金融資産を扱うため、通常のスマホアプリよりも利用に慎重になっている人が多くいました。
アプリを使い始める際には、銀行員など信頼できる人に付き添ってもらい、安心して使い始めたいという声が聞かれました。しかし、近年は金融機関の店舗削減や来店の事前予約制導入に伴い、窓口で気軽に質問できる機会が減っています。
スマホアプリの使い方講座や、使い方のチラシを配布している金融機関もあり、そうしたオフラインの接点は、シニア世代にとって安心感を与え、利用の動機づけにつながるようです。
2.「スマホアプリは若者向けなので、使えなくても仕方がない」と諦めている
インタビューからは、スマートフォンアプリに対して「自分には関係のないもの」と感じ、利用を諦めてしまっている様子も見えてきました。
例えば、スマホアプリを使っていて分からないことがあると、「若者向けのサービスなんで(自分は対象外)って言われてるみたいで嫌な気分になります」といった声があり、分からない状態が続くことで、自分は対象ではないと感じてしまうことがうかがえます。
また、「銀行のアプリは使っていない。振込はPCからやって、スマホはLINEの残高照会で十分です」といった意見からは、できる範囲の使い方にとどめ、積極的に活用しようとしない様子も見られます。
一方で、「スマホアプリで振込ができるんですか?知らなかったです」といった声もあり、そもそも機能の存在自体が認識されていないケースも見られました。
さらに、「メニューが多いと邪魔ですよね。カスタマイズできたらいいのに」といった意見からは、情報量の多さが使いづらさにつながっていることも分かります。
このように、情報の多さや分かりにくさが「自分には使えないもの」という認識につながり、結果として利用を諦めることにつながる可能性が見えてきました。
情報過多なアプリは、混乱を招く
金融アプリの高機能化に伴い、残高照会や振込などの基本機能に加えて、多くの機能が提供されています。また、金融アプリ上では新商品やユーザーに合ったおすすめ商品など、多くの広告情報が掲載されているものもあります。
また、ポップアップ広告を気づかずに押してしまうことで、元の画面に戻れなくなり、困惑するなどのケースも起こります。
3.文字が見づらい・言葉の意味がわかりづらく、使っていて不安になる
インタビューからは、画面上の文字の見づらさや用語の分かりにくさが、操作時の不安につながっている様子も見えてきました。
例えば、「他の人に送金したいときには、『振込』を押すんですか?」といった声があり、機能が直感的に理解されていないケースが見られます。言葉が意味する機能が伝わらないことで、操作に対する迷いや不安が生じていると考えられます。
また、「見づらく感じるので、文字がもう少し大きくて太いと見やすいですね」といった意見からは、視認性の課題が影響していることが分かります。
さらに、「(振込操作をしながら)6と9の見分けが難しくて不安です」といった声もあり、数字の判別といった基本的な部分でも不安を感じている様子がうかがえます。
このように、文字の見やすさや言葉の分かりやすさといった基本的な設計が不十分であると、操作への不安につながり、安心して利用できない原因の一つになっていることが分かりました。
見やすさ・分かりやすさが安心感につながる
目が見づらくなるシニア世代にとって、コントラスト不足や小さな文字を多用したアプリは使いづらく感じます。特に、送金の場面では、数字が見分けづらく不安に感じたり、ゼロの個数がわかりづらく、振込金額のケタ間違いを心配する人もいました。
また、銀行用語がわかりづらいという、金融機関ならではの問題も発見されました。シニア世代の方には「振込」と「振替」の違いがわからず、操作が止まってしまう人もいました。普段何気なく使っている単語は、シニア世代だけでなく、銀行を初めて使う若者や、日本語を勉強中の外国の方々などにも共通しうる課題です。
自分の大切な資産を扱う金融アプリでは、ちょっとしたわかりづらさが大きな不安を招き、利用意向の低下につながります。
まとめ
今回のインタビューから、シニア世代はデジタルバンキングに対して必ずしも消極的ではなく、使ってみたい気持ちや便利さへの期待を持っていることが分かりました。
一方で、「使い方を知りたいのに教えてもらえる機会がない」「スマホアプリは若者向けだと感じてしまう」「文字や言葉が分かりづらく不安になる」といった課題も見えてきました。特に金融アプリは、自分の大切な資産を扱うため、少しの分かりづらさが大きな不安につながります。シニア世代が安心して利用するためには、見やすさや分かりやすさに加え、使い始めを支えるサポートや、迷わず操作できる設計が重要です。
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