CULUMUのシニアリサーチ事例

エピソード4

    Report

    :商品開発から見えたシニア・高齢者と共創するガイドラインとは

    CULUMUのシニアリサーチ事例

    【連載第4回】 商品開発から見えたシニア・高齢者と共創するガイドラインとは


    統計から見るシニア世代とデジタルバンキング

    スマートフォンを利用するデジタルバンキングに何らかの難しさを抱えている

    全国銀行協会の調査によると、60〜79歳のデジタルバンキングを使っている人の割合は、PCの場合、全世代平均を上回っていました。

    しかし、スマートフォンアプリの場合、全世代平均を大きく下回ることがわかりました。

    このことから、シニア世代は必ずしもデジタルバンキング全般に消極的なわけではなく、スマートフォンを使ったデジタルバンキングに難しさがあると考えられます。

    PCでは利用が多く、スマホでは非利用が多いシニア世代のデジタルバンキング利用状況を示したグラフ

    インタビューで知るシニア世代とデジタルバンキング

    調査対象者

    シニア世代を対象にデジタルバンキングの利用意向・実態を調査

    • 年代・性別: 60歳以上の男女

    • 人数:15名

    • 調査場所:東京(CULUMUオフィス)

    • 調査方法: デプスインタビュー・行動観察

    • 時間: 90分/人

    調査項目

    • どのようなスマートフォンアプリを使っているか

    • 銀行に行く頻度や目的

    • デジタルバンキングの利用有無・利用意向・利用している機能

    今回の調査では、年代問わず高いITリテラシーを持ち、若い世代同様に金融アプリを使いこなす人もいる一方、「金融アプリを使ってみたい」という気持ちはあるものの、利用に難しさを感じるシニア世代もみられました。

    ITリテラシーの高低と金融アプリを使いたい気持ちの有無で、シニア世代を4タイプに分類した図

    金融アプリは、設計や開発の工夫を加えることで、より多くの人にとって使いやすくなる可能性があります。

    インタビューから見えた3つの課題

    インタビューの結果、シニア世代におけるデジタルバンキング利用には、大きく3つの課題が見えてきました。

    1つ目は、「使い方を知りたいのに、教えてもらえる機会がなかなかない」という点です。

    2つ目は、「スマートフォンアプリは若者向けなので、使えなくても仕方がない」と諦めてしまっている点です。

    3つ目は、「文字が見づらい」「言葉の意味がわかりづらい」といったことから、使っていて不安に感じるという課題です。

    1. 使い方を知りたいのに、教えてもらえる機会がなかなかない

    まず、インタビューから見えてきたのは、使い方を知りたいという意欲がある一方で、それを学ぶ機会があまりないという課題です。

    例えば、「行員さんにアプリの使い方を聞きたくても、『来店予約してください』と返されそうで気軽に聞けない」といった声がありました。サポートを受けたい気持ちはあっても、実際にはハードルを感じてしまうケースが見られます。

    また、「FAQでは知りたいことしか教えてくれないが、人であればこちらの意図を汲み取って教えてくれるので安心できる」といった意見から、人を介した情報提供が安心感を向上させることがうかがえます。

    さらに、「銀行のアプリの使い方は、家族ではなく行員に聞きたい。専門家の方が安心できる」といった声もあり、専門家から直接教えてもらえる環境が求められていることが分かります。

    一方で、「銀行員に勧められた説明会をきっかけにアプリを使い始めた」という事例もあり、適切な機会が提供されれば利用につながる可能性も見えてきました。

    このように、シニア世代においては「学びたい」という意欲に対して「学べる機会」が十分に提供されておらず、それがデジタルサービスの利用をためらう一因になっていると考えられます。

    重要な情報だからこそ、安心して使い始めたい

    デジタルバンキングでは自分の金融資産を扱うため、通常のスマートフォンアプリよりも利用に慎重になっている人が多くいました。

    アプリを使い始める際には、銀行員など信頼できる人に付き添ってもらい、安心して使い始めたいという声が聞かれました。しかし、近年は金融機関の店舗削減や来店の事前予約制導入に伴い、窓口で気軽に質問できる機会が減っています。

    スマートフォンアプリの使い方講座や、使い方のチラシを配布している金融機関もあり、そうしたオフラインの接点は、シニア世代にとって安心感を与え、利用の動機づけにつながるようです。

    2. 「スマートフォンアプリは若者向けなので使えなくても仕方がない」と諦めている

    インタビューからは、スマートフォンアプリに対して「自分には関係のないもの」「若者向けのサービス」と捉え、利用を諦めてしまっているシニア世代の姿が明らかになりました。

    スマートフォンアプリを使っていて分からないことがあると、「若者向けのサービスだから、自分は対象外と言われているように感じる」といった声があり、操作の難しさだけでなく、心理的な疎外感が利用のハードルになっていることがわかります。一方で、「メニューが多いと邪魔」「カスタマイズできたらいいのに」という声もあり、情報量やUI設計がアプリの利用意欲に影響を与えることが分かりました。

    また、「銀行のアプリは使っておらず、振込はPCで行い、スマートフォンはLINEの残高確認で十分」といったように、スマートフォンの活用範囲を限定しているケースも見られました。さらに、「スマートフォンアプリで振込ができること自体を知らなかった」という声もあり、機能の認知不足も利用の障壁となっていることが分かりました。

    一方で、「メニューが多くて分かりづらい」「カスタマイズできたら使いやすいのに」といった意見もあり、情報量の多さやUI設計の複雑さが、理解や利用意欲を下げている可能性も示唆されました。

    金融アプリの高機能化に伴い、残高照会や振込などの基本機能に加えて、多くの機能が提供されています。また、金融アプリ上では新商品やユーザーに合ったおすすめ商品など、多くの広告情報が掲載されているものもあります。

    また、ポップアップ広告を気づかずに押してしまうことで、元の画面に戻れなくなり、困惑するなどのケースも起こります。

    スマートフォンアプリを使い慣れていない人々にとって、こうした情報過多なアプリは混乱を招いてしまいます。

    3. 文字が見づらい・言葉の意味が分かりづらく、使っていて不安になる

    インタビューからは、アプリの視認性や用語の分かりづらさが、不安感につながっている様子が見られました。

    例えば、他の人に送金したいときにどのボタンを押せばよいのかわからず、不安に感じる人もおり、「振込」が直感的に理解されていないケースも確認されました。

    また、「見づらく感じるので、文字がもう少し大きくて太いと見やすい」といった意見や、「数字の6と9の見分けが難しくて不安」といった声もあり、視認性の課題が操作時の不安に直結していることが分かりました。

    目が見づらくなるシニア世代にとって、コントラスト不足や小さな文字を多用したアプリは使いづらく感じます。特に、送金の場面では、数字が見分けづらく不安に感じたり、ゼロの個数がわかりづらく、振込金額のケタ間違いを心配する人もいました。

    また、銀行用語がわかりづらいという、金融機関ならではの問題も発見されました。シニア世代の方には「振込」と「振替」の違いがわからず、操作が止まってしまう人もいました。普段何気なく使っている単語は、シニア世代だけでなく、銀行を初めて使う若者や、日本語を勉強中の外国の方々などにも共通しうる課題です。

    自分の大切な資産を扱う金融アプリでは、ちょっとしたわかりづらさが大きな不安を招き、利用意向の低下につながります。

    まとめ

    本記事では、シニア世代へのインタビューを通じて、デジタルバンキングの利用実態と課題を明らかにしました。

    その結果、「使い方を知りたいが学ぶ機会がない」「自分には使えないものだと感じてしまう」「視認性や言葉の分かりづらさから不安を感じる」といった、単なる操作上の問題にとどまらない課題が見えてきました。また、心理的なハードルや不安感が利用を妨げていることも明らかになりました。

    シニア向けのサービスを検討する上では、機能の充実だけでなく、学習機会の設計や安心して使える体験、そしてわかりやすい情報提示にまで目を向ける必要があります。
    ユーザーの声に丁寧に耳を傾け、表面的なニーズではなく、その背景にある本質的な課題にアプローチすることが重要です。

    keyboard_arrow_right

    ジャーナルトップへ

    keyboard_arrow_right

    関連記事

    最新のレポート

    当事者発想
    あなたの誰かのためは、何のためか

    こちらで提供中 amazon
    新規タブで開く
    本の表紙

    好評
    発売中

    Contact

    お問い合わせ

    お気軽にご相談ください。お見積もり依頼も可能です。1営業日中にご返信いたします。

    お問い合わせをする

    keyboard_arrow_right

    Service introduction

    サービス紹介資料

    CULUMUが提供するインクルーシブなデザインソリューションをご紹介しています。ぜひご活用ください。

    資料をダウンロードする

    keyboard_arrow_right

    採用情報

    Careers

    N=1の当事者の声からしか、生まれない未来がある
    “つくる”を超える“共創”に挑戦する仲間を待っています

    詳しく見る

    新規タブで開く