D&I実践企業の事例(後編)

エピソード3

    Report

    :D&Iの取り組みから広がるインクルーシブデザイン事例集(全50ページ)

    D&I実践企業の事例(後編)

    【連載第3回】D&Iの取り組みから広がるインクルーシブデザイン事例集(全50ページ)


    前回は、ファーストリテイリングとソニーの事例を通して、D&Iの取り組みが職場づくりや企業評価にとどまらず、製品・サービス開発にも広がっていることを紹介しました。

    今回は引き続き、Microsoft、JAL、ユニ・チャームの事例を取り上げます。各社がどのようにD&Iを推進し、その取り組みをイノベーションへとつなげているのかを見ていきます。

    Microsoftの事例

    多様性を尊重した人事施策

    日本マイクロソフトは、人種、国籍、性別、年齢、障害、性的指向、性同一性、価値観、働き方など多様性を認め、尊重し、社員が自分の力を発揮できるような場所を提供することで、企業ミッションである「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を目指しています。

    Microsoftが多様性を尊重した人事施策に取り組むことを示すページ例

    働き続けられる職場づくり

    マイクロソフトでは、さまざまなライフステージの変化を経験しても働き続けることができるよう、リターンシッププログラムや定年退職年齢の引き上げ、障害者への合理的配慮など、さまざまなサポート制度を用意しています。

    また、社員によるコミュニティであるEmployee Resource Group(ERG)を設け、より働きやすいインクルーシブな職場づくりを行っています。ERGでは、社内ネットワーキング、相互理解の促進・助け合い、人事への提案、外部団体との連携などを行っています。

    多様な社員が働き続けられるよう支援するMicrosoftの職場づくりの例

    ダイバーシティ & インクルージョンレポート

    マイクロソフトは年次レポートを発表しており、マイクロソフト全体が過去最も多様性に富んだ状態にあることを詳細なデータとともに公開しています。こうした情報開示は、D&Iに関する外的評価の向上にもつながっています。

    2022年レポートでは、コアビジネスに従事する女性従業員割合が初めて30%を超えたことや、人種的・民族的マイノリティ割合が過去最高を達成したことなどが報告されています。

    Microsoftのダイバーシティ&インクルージョンレポートの例

    アクセシビリティに配慮したアクセサリー

    Microsoft Adaptive Accessoriesは、従来のマウスやキーボードを使用することが難しいユーザーや、PCの生産性を向上させたいユーザー向けに開発されたアクセサリーです。ユーザーは3Dプリンティング技術を活用してカスタマイズすることもでき、よりフィットしたデバイスを使用できます。これらのアクセサリーは、Microsoft Adaptive Hubを介してPCやスマートフォンに接続することができます。

    PC操作をしやすくするMicrosoft Adaptive Accessoriesの商品例

    Microsoft365のアクセシビリティツール

    Microsoft 365では、多様な人が文章を作成したり読んだりできるよう、さまざまなアクセシビリティ機能が提供されています。

    イマーシブリーダー:文書やメールの内容を読み上げたり、読んでいる行以外を隠したり、文字間隔や背景色を変更できる
    スクリーンリーダー:Teamsを読み上げアプリとキーボードのみで操作できる
    音声合成機能:「読み上げ」機能により、テキストや数値を読み上げることができる

    Microsoft 365のアクセシビリティ機能を使い、作業を支援する例

    JALの事例

    ESG戦略を経営戦略の軸に据える

    JALグループの2030年の「JAL Vision 2030」では、ESGを経営戦略の軸に据え、安全・安心な社会と持続可能な未来を創造することを掲げています。成長を「企業価値の向上」と定義し、ESGの視点で商品サービスやビジネスモデルを変革していきます。JALグループのESG戦略は、社会課題の解決により人流・商流・物流を創出し、人々の交流と相互理解に貢献し、自由な社会と持続的な需要の創出を目指しています。

    JALがESG戦略を経営戦略の軸に据えていることを示すページ例

    女性管理職比率の向上

    JALグループでは「2025年度末までにグループ内女性管理職比率30%」という経営目標を掲げ、社員の約半数を占める女性社員の活躍を推進しています。2022年3月末現在、JALグループの女性管理職比率は21.9%まで上昇しており、毎年着実に増加しています。

    JALグループの女性管理職比率が上昇していることを示すグラフ

    LGBTQへの理解促進

    JALグループでは、異性と法律上の結婚をしている社員に適用する制度を、会社の定める同性パートナー登録を行った社員にも同様に適用しています。また、2019年度には国内初の「JAL LGBT ALLYチャーター」を実施しました。2020年10月1日より、機内や空港で使用していた「Ladies and gentlemen」のアナウンスを、ジェンダーニュートラルな表現に変更するなど、社内外に向けたLGBTQへの理解促進の取り組みを行なっています。

    JALがLGBTQへの理解促進に取り組んでいることを示す事例

    D&Iアワードで「D&I Award賞」を受賞

    JALグループは「D&I Award 2021」で、最高評価の「ベストワークプレイス」に認定されたほか、「D&I Award賞」を受賞しました。

    「D&I Award」は、日本初のD&I推進のための表彰制度であり、D&Iに取り組む企業をジェンダー、育児・介護、障がい、多文化共生、LGBTの5つの観点で評価し、4つのランクに分けて認定しています。

    受賞理由として、ジェンダーニュートラルな英語アナウンスや障害者向けのネイルルームの設置など、多様な視点を活かした取り組みや社内外での変革が評価されました。また、D&Iを企業理念の一部とし、実行に向けた姿勢や積極的な学びの姿勢も評価されました。

    JALグループがD&I Awardを受賞したことを示す写真

    アクセシブルツーリズム

    JALグループでは、年齢や障害に関係なく旅行を楽しむことができる「アクセシブルツーリズム」を推進し、「車いすで行く沖縄 3・4日間」「家族みんなで行こう!車いすで雪あそびツアー」「ファミリーで行く 車いすde感じるハワイ」など、さまざまなアクセシブルツアーを展開しています。

    団体ツアーだけでなく、自由に選ぶことのできる個人型ツアーも販売しています。車いす利用者の社員とともに、当事者の目線で商品開発を進めることで、客室の入り口や通路の幅、バス・トイレの幅や手すりの有無など、車いす利用者が知りたい情報が事前に提供されています。

    年齢や障害の有無にかかわらず旅行を楽しめるJALのアクセシブルツーリズム事例

    子連れ旅を全力サポート

    JALグループでは、子育て中の社員とともに、子連れでも安心して飛行機旅ができるサービスを提供しています。搭乗前のサービスとしては、子ども連れが優先的にチェックインできるカウンターやベビーカーの無料貸し出しが行われています。また、搭乗後には、子ども向けの機内コンテンツやヘッドホン、ノベルティのプレゼントなども用意されています。さらに、ベネッセとのコラボレーションにより、飛行機のことが学べるしまじろうの絵本も作成するなど、子どもに喜んでもらえるコンテンツを多数用意しています。

    子連れの飛行機移動を支援するJALのサービス例

    ユニ・チャームの事例

    「SDGsの達成への貢献」をパーパスに、共生社会の実現を目指す

    ユニ・チャームは、SDGsの達成に貢献するために、「パーパス」を設定しました。「ミッション」は「共生社会の実現」であり、全ての人が自立し互いに助け合い、自分らしく暮らす社会を目指しています。「ビジョン」では、「NOLA & DOLA (Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities)」という理念を実践し、生活者の負担を軽減し心と体をサポートすることや、個々の夢の実現に貢献することを掲げています。「バリュー」は、志と使命感であり、全世界の社員が「共振の経営」という統一されたマネジメントモデルを推進することで、ミッションとビジョンを支えています。

    ユニ・チャームがSDGs達成への貢献と共生社会の実現を目指すことを示す図

    文化や宗教に配慮した地域雇用の拡大

    ユニ・チャームでは、事業展開を通じて各国・地域の雇用拡大に取り組んでいます。特にサウジアラビアでは、女性の就労機会が限られている状況に対応し、女性専用の工場を設立しました。この取り組みにより、現地の文化や規制に配慮しながら、女性たちが働くことができる環境を提供し、多くの女性が活躍しています。工場だけでなく、プロモーターや商品開発部門でも女性が活躍しており、潜在的な人材を掘り起こすことに貢献しています。

    また、インドでは製造部門向けにハラスメント研修を行うなど、コンプライアンス意識の向上に取り組んでいます。

    文化や宗教に配慮しながら地域雇用を広げるユニ・チャームの取り組み

    「ブルームバーグ男女平等指数」に3年連続選定

    「ブルームバーグ男女平等指数」は、企業のジェンダーに関する情報開示の透明性や、男女平等に関する取り組みなどを評価する指標で、

    ユニ・チャームは日本企業15社のうちの1社として選出されました。

    ユニ・チャームは、社員の多様性を尊重し、働きやすい人事制度を整備しています。フレックスタイム制度やリモートワーク制度を導入し、2022年には育児介護休業関連制度を改正・拡充しました。女性管理職比率は14.4%であり、2030年までに30%に引き上げることを目標としています。積極的な情報開示を行いながら、働きやすい職場環境を提供しています。

    ユニ・チャームがBloomberg Gender-Equality Index 2023に選定されたことを示すロゴ

    顔がみえマスク

    「顔がみえマスク」は、聴覚に障がいのある方や特定のニーズを持つ教育現場、介護施設、接客業、報道機関などのコミュニケーション改善に活用されています。マスクの透明部分が広く、顔の70%を視認できるため、表情や口の動きが見えます。また、鼻から頬周りまでフィットする設計で、飛沫の飛散を抑えます。耳かけも快適で耳が痛くなりにくく、水洗いして繰り返し使える仕様です。2022年10月にはくもり止め機能の強化や頬に直接触れないようにするあて布の改良も行われ、より快適なつけ心地が実現されています。

    表情や口の動きが見える、コミュニケーションに配慮した「顔がみえマスク」の商品写真

    デング熱から赤ちゃんを守る

    ユニ・チャームは、東南アジアや南アジア、中南米などの地域で社会的な課題となっているデング熱などの感染症から赤ちゃんを守るため、蚊を寄せ付けない機能を備えたおむつ「MamyPoko Extra Dry Protect」を開発しました。このおむつのテープ部分には、蚊が忌避するレモングラス成分がマイクロカプセルに詰め込まれており、テープを擦ることでカプセルが破砕され、蚊を遠ざける効果があります。さらに、ブラジルでは「ANTIMOS LENÇOS REPELENTES」というウェットティッシュが発売されており、蚊が忌避する成分が配合されています。シートタイプのウェットティッシュは、スプレータイプの忌避剤と比べて薬剤が口や目に入る心配が少なく、塗り残しも少ないのが特徴です。レモングラスの香りが塗布されており、開封すると即座に蚊除けの効果が期待できます。これらの商品は、自然由来の材料を使用し、赤ちゃんの肌に触れても安心です。

    デング熱から赤ちゃんを守るためのユニ・チャームの商品例

    まとめ

    Microsoft、JAL、ユニ・チャームの事例からも分かるように、D&Iの取り組みは職場環境の改善や外部評価の向上だけでなく、新たな製品・サービスの創出にもつながっています。

    多様な人々の視点や課題に向き合うことで、これまで見過ごされていたニーズを発見し、新しい価値を生み出すことができます。D&Iは企業の社会的責任としてだけでなく、イノベーションを生み出す重要な取り組みとして、今後ますます重要になっていくでしょう。

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