食品業界にインクルーシブデザインが必要な理由
エピソード2
Report
:サスティナブルな食品業界を実現するインクルーシブな取り組み事例集

【連載第2回】 サスティナブルな食品業界を実現するインクルーシブな取り組み事例集
社会はますます多様化し、人の価値観やニーズも広がり続けています。アレルギーや健康志向、ライフスタイルの違いなどにより、食に対する選択基準は人によって大きく異なります。こうした背景から、より多様な人々が安心して選び、食を楽しむことができるようにするための視点として、インクルーシブデザインの重要性が高まっています。
嚥下障害の課題
食品業界において大きな課題の一つが、嚥下障害です。
日本国内の地域在住高齢者における嚥下障害の有病割合は16%から23%とされており、75歳以上では27%に増加しています。また、加齢のみでなく、神経・筋疾患、脳性まひや薬の摂取による副作用で、嚥下障害を抱える方はさらに多いとされています。
嚥下障害は、単に食べづらさにとどまらず、さまざまな健康リスクにつながります。低栄養や筋力低下、誤嚥性肺炎、窒息といった身体的リスクに加え、QOL(生活の質)の低下など、さまざまな健康障害のリスクを引き起こします。
特に誤嚥性肺炎は深刻で、 高齢者の肺炎のうち7割以上が誤嚥性肺炎であるとされています。その主な原因が、嚥下障害となっています。

出典:摂食嚥下障害パンデミックの疫学 The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(2021)
世界のアレルギーを持つ人の割合
食物アレルギーを持つ人は世界で約2億5千万人といわれ、大人よりも子どもに多く発症しています。また、日本では、食品アレルギーを持つ人の割合は全人口の1〜2%とされ、特に乳児においては約10%が何らかの食品アレルギーを持っていると考えられています。これらのデータは、食物アレルギーが国内外で重要な健康問題であることを示しています。

出典:世界アレルギー機構(WAO)、食品におけるアレルギー表示について 愛知県衛生研究所 (2024)
食品Techで広がるパッケージ業界の未来
食品アレルギーの予防TechのUkko、誰でも食べられるグルテン開発への取り組み
Ukkoは、食物アレルギーやグルテン関連疾患に苦しむ人々の生活改善を目指し、免疫学、機械学習、タンパク質工学を駆使して新しいグルテンの開発に取り組んでいます。これにより、アレルギーを引き起こさない食品を提供し、食物アレルギー市場におけるニーズに応えています。
食物アレルゲンそのものを再設計することで、アレルギー反応を引き起こさない新しいタンパク質の開発に成功しました。これにより、グルテンフリーのピザ、パスタ、焼き菓子を安全に作ることが可能になりました。
こうした開発の背景には、AIの活用があります。AIを使い、タンパク質と免疫システムの相互作用を分析することでアレルギー反応を引き起こさない新しいデザインを導き出し、食品や治療薬への応用が進められています。
さらに、ピーナッツアレルギーに対する新しい治療薬開発にも取り組んでおり、臨床試験の開始が予定されています。

食品業界に必要とされるデザイン
食品業界は、食に対するニーズだけでなく、さまざまな課題をかかえる消費者に対しても商品・サービスを提供することが求められます。これらの課題に対応するためには、すべての人に配慮したインクルーシブデザインの考え方が重要となります。次の記事では、食品業界でサステナブルかつインクルーシブな取り組みを実現しているケーススタディを集めました。ぜひ、新しいアイデアのヒントとしてご参考ください。
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