金融業界におけるインクルーシブデザインの必要性
エピソード2
Report
:金融業界で広がるインクルーシブデザイン

【連載第2回】 金融業界で広がるインクルーシブデザイン
多様なユーザーを抱える金融機関とインクルーシブデザインがもたらす価値
企業にとってのインクルーシブデザインは、従来のアプローチでは実現できなかったサービス価値を広げる可能性があります。
これまでのマスを対象としたデザインでは、多様性が排除されがちでした。そのため、これからの日本が直面する人口減少や超高齢社会、地方の過疎化などの問題への対処が難しくなることが予想されます。
また昨今のコモディティ化が進むマーケットでは、平均的なニーズを満たすだけでは独自性の創出が極めて難しくなっています。さらに、CSRの観点から見ても、特定の顧客接点のみでは単一的で、社会貢献が限られてしまいます。

超高齢社会への突入
令和5年版高齢社会白書による試算では、2035年までに高齢者(65歳以上)の人口が約3割になるといわれています。これは端的にいって3割のユーザーが高齢者になることを意味しています。世代別金融資産においても無視できないセグメントである高齢者に対する施策として、高齢者間のデジタル格差、PC・スマートフォンの利用比率などを考慮したインクルーシブな取り組みが求められています。

964万人以上、つまり日本人の約7.6%の人が何かしらの課題を抱えています。さらに、そのうちの約95%にあたる900万人以上が、施設や病院への入所、入院をせずに生活しています。
出典:内閣府「令和4年版 障害者白書」(2022)

私たちの身の回りには気が付きづらいさまざまな多様性があります
60代以上のスマホ保有率は約8割と、多くの人がスマホを持っています。その一方で、日常的に利用しているのは約50%にとどまります。利用用途も、LINEなど家族との連絡手段にとどまります。
出典:モバイル社会研究所 「モバイル社会白書」 (2022)日本語が得意でない外国人の36.8%が「多言語対応している」ことを決め手に銀行を選択しています。この割合は、「サービス内容」を決め手と回答した割合とほぼ同等です。
出典:WOVN.io「在留外国人が生活サービスに加入する際の情報源と言語について」(2022)インターネットの利用率は年々高まっているものの、障害者の約40%は日常的に利用できていません。
出典:総務省「障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査研究」(2012)
深まる社会の分断
高齢化が進む欧州では、銀行の急速なデジタル化や窓口業務の簡素化に対して、議論が起きています。
スペインでは、金融サービスのデジタル化が進む一方で、対面でのサポートを求める高齢者が取り残されているという問題が顕在化しました。スペインの元泌尿器科医、カルロス・サンフアンさん(78)が金融アプリの利用に苦労し、銀行に対して親切なサービスを求める運動をオンラインで開始したことをきっかけに、多くの共感が集まり、銀行の対応を見直す動きにもつながっています。
出典:アングル:デジタル化急ぐ銀行に「待った」、欧州高齢者の反乱 Reuters(2022)
このような事例から、急速なデジタル化の進展の中で、一部のユーザーがサービスから排除されてしまうリスクがあることが分かります。一方で、デジタル化そのものは依然として重要な取り組みであり、DXの推進は今後も不可欠です。
だからこそ、誰一人取り残さない形でデジタル化を進めることが、これからの金融サービスにおいて重要になっていくといえるでしょう。
誰一人取り残されない社会の実現
以上のデータが示すとおり、これからの日本の課題を把握しつつ、事業内でさまざまなユーザーに対して価値を提供するためにインクルーシブデザインの考え方がより重要になると考えられます。また、すでに多様なユーザーを抱える金融機関にとって、金融包摂を意識したサービスづくりが、未来の企業価値の向上と事業の独自性をもたらすキーファクターとなることが予想できます。

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