近年のWebアクセシビリティのトレンド
エピソード1
Report
:全国100銀行のウェブアクセシビリティ「金融機関のアクセシビリティ対応状況 一斉調査レポート」

【連載第1回】 全国100銀行のウェブアクセシビリティ「金融機関のアクセシビリティ対応状況 一斉調査レポート」
Webアクセシビリティに取り組むべき背景
近年、ウェブサービスの普及に伴い、よりアクセシブルなウェブサイトが求められています。デジタル庁は、ウェブアクセシビリティガイドを公開するなど支援に努めています。
2024年からは障害者差別解消法が改正され、いままでは努力義務であった民間企業に対しても障害のある方に対して、申し出があった場合に合理的配慮を提供することが義務化されることになりました。制度の詳細については、内閣府の「障害者差別解消法」ポータルサイトで解説されています。
これらの取り組みからもわかるように、今後はこれまで以上にウェブ上での対応が求められているといえます。
公的機関のアクセシビリティの取り組み
以前から合理的配慮への対応が義務化されており、環境整備も求められてきた公的機関においては、差別解消法の合理的配慮以外の点でもWebアクセシビリティの対応が進められています。
デジタル社会推進標準ガイドライン
行政の入札案件への応札者に「情報アクセシビリティ自己評価様式に基づいたアクセシビリティの対応状況」の提出を求めることで、アクセシビリティ環境の整備に努めるとされています。これにより、入札の時点からアクセシビリティへの対応が求められるようになりつつあります。
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法
2022年5月に施行・公布された法律で、障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策を総合的に推進し、共生社会の実現を目指すことを目的としています。推進法であるため現時点では実効性はありませんが、今後この法律に基づいた活動が増えていくことが期待されます。
金融庁のアクセシビリティに対する対応
障害者差別解消法や障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法にあわせて、金融庁も取り組みを始めようとしています。
直近では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針や障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領といったものについてのパブリックコメントが出されていたりと、今後、金融庁から金融機関に対する具体的な対応の方針が出されていくことが考えられます。

金融機関のアクセシビリティのトレンド
近年、サイトやアプリのリニューアルを行った金融機関では、アクセシビリティを踏まえたリニューアルを行うケースが増えています。
また、アクセシビリティの対応をコンテンツ化し、顧客に発信している金融機関も増えてきており、対外的な発信の必要性は今後も増えてくると言えます。
ここでは、アクセシビリティを取り入れた2つの事例を簡単に紹介します。
みんなの銀行
アプリに対するアクセシビリティの取り組みをオウンドメディア(note)で発信しています。アプリにおけるスクリーンリーダーの読み上げ改善前後の様子の動画や、具体的なアクセシビリティの対応内容が紹介されています。

出典:みんなの銀行
三井住友銀行
「SMBCのアクセシビリティ」というページを設け、取り組みを紹介しています。アクセシビリティに対する考え方や取り組みについて発信がされています。

出典:三井住友銀行
金融業界におけるアクセシビリティの必要性
多様なユーザーを抱える金融機関とインクルーシブデザインがもたらす価値
企業にとってのインクルーシブデザインは、従来のアプローチでは実現できなかったサービス価値を広げる可能性があります。
これまでのマスを対象としたデザインでは、多様性が排除されがちでした。そのため、これからの日本が直面する人口減少や超高齢社会、地方の過疎化などの問題への対処が難しくなることが予想されます。
また昨今のコモディティ化が進むマーケットでは、平均的なニーズを満たすだけでは独自性の創出が極めて難しくなっています。さらに、CSRの観点から見ても、特定の顧客接点のみでは単一的で、社会貢献が限られてしまいます。

数字で見る多様性
私たちの身の回りには気が付きづらいさまざまな多様性があります
60代以上のスマホ保有率は約8割と、多くの人がスマホを持っています。その一方で、日常的に利用しているのは約50%にとどまります。利用用途も、LINEなど家族との連絡手段にとどまります。
出典:モバイル社会研究所 「モバイル社会白書」 (2022)日本語が得意でない外国人の36.8%が「多言語対応している」ことを決め手に銀行を選択しています。この割合は、「サービス内容」を決め手と回答した割合とほぼ同等です。
出典:WOVN.io「在留外国人が生活サービスに加入する際の情報源と言語について」(2022)インターネットの利用率は年々高まっているものの、障害者の約40%は日常的に利用できていません。
出典:総務省「障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査研究」(2012)

964万人以上、つまり日本人の約7.6%の人が何かしらの課題を抱えています。さらに、そのうちの約95%にあたる900万人以上が、施設や病院への入所、入院をせずに生活しています。
出典:内閣府「令和4年版 障害者白書」(2022)
深まる社会の分断
高齢化が進む欧州では、銀行の急速なデジタル化や窓口業務の簡素化に対して、議論が起きています。
スペインでは、金融サービスのデジタル化が進む一方で、対面でのサポートを求める高齢者が取り残されているという問題が顕在化しました。スペインの元泌尿器科医、カルロス・サンフアンさん(78)が金融アプリの利用に苦労し、銀行に対して親切なサービスを求める運動をオンラインで開始したことをきっかけに、多くの共感が集まり、銀行の対応を見直す動きにもつながっています。
出典:アングル:デジタル化急ぐ銀行に「待った」、欧州高齢者の反乱 Reuters(2022)_Internet Archive
このような事例から、急速なデジタル化の進展の中で、一部のユーザーがサービスから排除されてしまうリスクがあることが分かります。一方で、デジタル化そのものは依然として重要な取り組みであり、DXの推進は今後も不可欠です。
だからこそ、誰一人取り残さない形でデジタル化を進めることが、これからの金融サービスにおいて重要になっていくといえるでしょう。
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