CULUMUの”くるむダイアログ”は何を目指すのか? 渡邉真伍が語る、生成AIナレッジ共有の“対話”という選択
#インタビュー
デザインスタジオCULUMUで、新たに始まった”くるむダイアログ”。
くるむダイアログは、CULUMUのメンバーが日々の業務で得た知見や試行錯誤を持ち寄り、対話を通じて共有・可視化する取り組みです。AI活用を起点に、成功例だけでなく思考やプロセス、迷いも含めて言語化し、個人に閉じたナレッジを組織全体へ循環させていくことを目的としています。
その狙いは単なる情報共有ではなく、メンバーそれぞれが持つ“暗黙知”を引き出し、組織の力へと変換していくことにあると言います。
今回は、本企画を主導するデザイナー渡邉真伍に話を聞きました。

渡邉 真伍/SHINGO WATANABE
UX Designer
「ナレッジはある。でも、共有されていない」
──今回のAI会議、そもそもの背景から教えてください。
渡邉: もともと会社としてデザインやオフィスの取り組みの一環で考えていた施策なんですが、 改めて見てみると、メンバー個人がかなりいろんなナレッジを持っているんですよね。
ただ、それを共有する機会がほとんどない。
日々の業務の中では、それぞれがAIやツールを使って知見を溜めているんですけど、それが個人に閉じてしまっていて、ノウハウが属人化してしまっている状態でした。
特にAIに関しては、使っている人と使っていない人で知識差がかなり大きい。そこでまずは、「ナレッジを共有する場」を意図的に作ろうと。それが今回の”くるむダイアログ”です。
まとめても、すぐ古くなる問題
──AIに関する情報共有って、従来のナレッジ管理とは違う難しさがありますよね。
渡邉: まさにそこがポイントで。
以前はNotionやGeminiを使って、AIツールの情報をまとめようとしていたんですけど、AIツール側の進化のスピードが速すぎて、まとめ終わる頃にはもう使われなくなっている、みたいなことが起きていて。そのため、「ツールの使い方」を蓄積するやり方は難しいなと感じました。
それよりも、「その人が何を考えてAIを使っているのか」「どういう文脈で使っているのか」そういう部分を残した方が価値があるんじゃないかと思ったんです。
対話は「正解を出す場」ではない
──そこで「対話形式」を採用したと。
渡邉: そうですね。この会議は『議論』ではなくて『対話』を重視しています。
議論って、最終的に正解やベストプラクティスを決めにいくものだと思うんですけど、今回はそうではなくて、それぞれがどう考えているかを発見し合うことが目的です。
むしろ、成功事例だけじゃなくて、失敗や試行錯誤のプロセスも含めて共有したいんです。
そのほうが実態に近いし、継続的に取り組む意義が大きいと考えました。
陳腐化する知識と永く残る知識
──共有する内容の中でも、価値が残るものとそうでないものがありますよね。
渡邉: ありますね。例えば、ツールの具体的な使い方やTipsはどうしても陳腐化しやすい。
一方で、
どんな前提条件を与えたのか
どんなフレームワークで考えたのか
どこを人間が修正したのか
こういう部分は、ツールが変わっても残る知識だと思っています。
まさに“思考の型”の共有ですね。そうですね。そこが本質だと思っています。
デザインスタジオでのAI活用実態の希少性
──アウトプットとして情報発信することについては、どう考えていますか?
渡邉:デザインスタジオでのAI活用の実態って、意外と世の中に出ていないので、シンプルなデータでも価値があると思っています。
一般的にAIの活用事例って、「業務効率が何%改善した」とか、「このツールでこういう成果が出た」といった、ある程度整理された成功事例として語られることが多いと思います。
ただ、デザインの現場って、それとは少し違っていて。日々の業務の中で、ちょっとしたプロンプトの工夫やラフな検討での使い方、途中で使うのをやめた判断みたいな、すごく細かい試行錯誤の積み重ねで成り立っているんですよね。しかも、それらは「わざわざ記事にするほどではない」と判断されがちな内容でもある。
だから結果的に、デザインスタジオの現場でAIがどう使われているのか、その“実態”はほとんど外に出ていない状態になっていると思います。
──だからこそ、シンプルなデータでも意味がある。
渡邉:はい。
例えば「どのツールを使っているか」とか「どんなことに興味を持っているか」といった、一見シンプルな情報でも、”実際に手を動かしている人たちがどう使っているのか”という観点では、かなり価値があると思っています。
完成されたノウハウではなく、現場の温度感そのものを可視化する。それ自体が、あまり世の中に出ていない情報なので。そこに意味があると考えています。
一人一人が持っているものを、ちゃんと分け合える組織を目指して
──最後に、この取り組みを通じてCULUMUがどうなってほしいですか?
渡邉:シンプルに、全員が強くなっている状態ですね。
僕自身、これまでいろんなプロジェクトに関わる中で感じてきたのは、
一人ひとりがすごくいいものを持っているのに、それが共有されないまま終わってしまうことが結構多いな、ということで。それってすごくもったいないなと思っていて。
本当は、その人の中にある視点とか工夫とか、小さな気づきみたいなものが、もう少し自然に行き来する状態になれば、個人の力だけじゃなくて、チームとしての解像度も上がっていくはずなんですよね。
今回たまたまAIというテーマで始めているんですけど、本質的にやりたいのはそこではなくて、「人が持っているものを、ちゃんと他者と接続できる状態をつくる」ことなんだと思っています。
短期的にはAIのスキルを底上げすることも必要ですし、そこはちゃんとやりきりたいんですが、最終的には、誰かが何かを学んだときに、それが自然と周りに共有されていく、それが当たり前になっている状態をつくりたい。まさしく、ナレッジ共有が“仕組み”じゃなくて、“文化”として根付いている状態ですね。
そうなったときに、きっとCULUMUはすごく強いチームになっているんじゃないかなと思っています。
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