価値観のズレをどう乗り越えるか?Z世代研究から学ぶ、世代を超えた合意形成のヒント

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    複雑化する社会課題の解決には、企業・行政・市民といった多様なステークホルダーによる「共創」が不可欠です。しかし、異なる組織や立場の人間が集まる現場では、しばしば合意形成の壁に直面します。その中でも特に根深く、見えにくい壁が「世代による価値観の断絶」です。

    意思決定層(多くはX世代以上)と、これからの社会を担う若者世代(Z世代・α世代)。この間に横たわる深い溝を埋めない限り、真に持続可能なイノベーションは生まれません。

    今回は、CULUMUが主催するナレッジイベント「くるむとまなぶ」より、Z世代研究の専門家・中川晃准教授(静岡文化芸術大学)を迎えたセッションの内容を再構成。「Z世代の消費行動」という事象の裏にある価値観を紐解き、異なる価値観を持つ他者と、いかにして共通言語を見つけ、共創の場を設計すべきか、そのヒントを探ります。

    共創を阻む前提のズレ:「モノ・コト」から「トキ」へのパラダイムシフト

    共創プロジェクトにおいて、ベテラン層が陥りがちな失敗の一つに、「成果物(プロダクトやハコ)」や「体験(サービス)」を用意すれば人は動く、という思い込みがあります。しかし、中川氏はZ世代を理解するキーワードとして、消費行動の変容を挙げます。

    • モノ消費(所有):バブル期〜X世代に見られた、所有することへの価値。

    • コト消費(体験):ミレニアル世代中心の、体験・サービスへの価値。

    • トキ消費(瞬間・参加):Z世代に見られる、その時・その場でしか味わえない非再現性への価値。

    この「トキ消費」へのシフトは、単なる流行の話ではありません。「完成されたものを受け取る」ことよりも、「その瞬間に立ち会い、参加すること(プロセス)」に価値が置かれていることを意味します。

    共創の現場において、Z世代や若年層を巻き込む際、単に「意見を聞かせてほしい」と完成間近の段階で呼んでも彼らの熱量は高まりません。「その場限りの熱狂」や「二度と同じことが起きないライブ感」といったプロセスへの参画性をどう設計に組み込むか。これが、世代を超えた合意形成の第一歩となります。

    心理的安全性と居場所のデザイン

    中川氏の講義の中で特に議論となったのが、Z世代特有の「コミュニティ観」と「所属欲求」です。

    かつての世代のような「組織への強い帰属」とは異なり、Z世代はデジタルネイティブとして常に他者と接続しながらも、「自分が本当に心を許せる(繕わなくていい)居場所」をシビアに選別しています。

    CULUMUデザイナーの視点:

    「BeRealのような、Instagramほど着飾らず、ありのままの日常を共有するSNSが伸びている現象は示唆的です。所属欲求は強いものの、一つの場所に縛られたくはない。信頼できる『トキ(瞬間)』を共有できる場所を探しているのです」

    このインサイトは、共創プロジェクトの「場づくり」に重要な示唆を与えます。行政や大企業主導の共創会議は、往々にして形式的で繕った場になりがちです。しかし、本音を引き出し合意形成を図るためには、権威性を取り払い、未完成な状態(=繕わない状態)を共有できる心理的安全性の高い場をデザインする必要があります。

    不便益と参加が熱量を生む

    なぜ、多くのコンテンツが手軽にデジタルで手に入る時代に、あえて不便を伴う「ライブ」や「フェス」の市場が拡大しているのか。そこには「容易に手に入らないもの」への渇望があります。

    CULUMUデザイナーの視点:

    「音楽も情報も、いつでもどこでも手に入る時代になったからこそ、逆に『その瞬間、その場所にいないと体験できないこと』の価値が相対的に高まっています。効率化とは真逆の『刹那的な一瞬』にこそ、人は動かされるのかもしれません」

    共創のプロセスにおいても、効率的にオンラインで意見を集約するだけでは、強い合意形成は生まれません。わざわざ足を運び、時間を共有し、泥臭く議論する。そのような「非効率なプロセス(=トキ)」を意図的に共有することでしか、異なる価値観を持つステークホルダー同士の信頼関係は築けないのです。


    Guest Profile:中川 晃 さん(公立法人 静岡文化芸術大学 デザイン学部 准教授 / 博士(芸術) / 一級建築士) 

    東京藝術大学美術学部卒業、東京理科大学経営学研究科修了、日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程修了。
    東京藝術大学を卒業後、NHK(日本放送協会)、株式会社オリエンタルランドにて約300案件の報道・エンターテインメント等のプロジェクトを行う。その後、城西国際大学を経て2022年より現職。専門は空間デザイン、デザイン経営、若者論。
    「空間デザイン」の実務と共に「デザイン経営」や「若者論」でのコンサルティングや講演経験実績が多く、複合的に活動を行っている。

    静岡文化芸術大学HP:https://www.suac.ac.jp/education/faculty/design/nakagawa/
    researchmap: https://researchmap.jp/akiranakagawa

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