AI創薬の常識を覆すデザイン戦略:採用につながるコーポレートサイトリニューアルの舞台裏
iSiP株式会社
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テクノロジーで薬づくりを変える―iSiPが目指す創薬の未来
iSiP(アイシップ)様の事業内容を教えてください。

iSiP新名さん(以下、新名さん)「私たちは、独自のAIをはじめとするデジタル技術を駆使して、これまで世になかった新しい薬を生み出すことを目指して創業しました。ご存知かもしれませんが、薬の研究開発は非常に難しく、時間も費用も膨大にかかります。その一方で、治療法のない病気に苦しむ患者さんは増え続けているのが現状です。私たちはこの現状を変えたい、誰もが手に取れる薬を「より早く、より安く」届けたいという強い想いから、研究開発に過去の創薬データに依存しない独自の「AI創薬エンジン」を開発し、薬の候補を探索するプロセスそのものを再構築する独自のデジタル技術を取り入れています。」
DNXベンチャーズ様とiSiP様との関わりを教えてください。

DNX Ventures上野さん(以下、上野さん)「iSiPさんが2025年5月にシリーズAの資金調達をされたタイミングでDNX Venturesがリード投資家としてご出資させて頂きました。同時に、担当キャピタリストの白石が経営で、私はマーケティングや広報の領域で支援を行ってきました。ちょうどiSiPさんが企業ロゴやコーポレートサイトのデザインを一新したいというご要望があったので、リブランディングにあたり、どんなパートナーを選ぶのがベストなのかを一緒に考えさせていただきました。」
AI創薬ベンチャーの独自性を求めて:コーポレートサイトリニューアルで実現した、採用のための差別化
今回コーポレートサイトのリニューアルを検討された背景やきっかけは何でしたか?

新名さん「コーポレートサイトのリニューアルを考えたのは、まず機能的に不足している点が多かったからです。具体的には、お客様からのお問い合わせ窓口や、採用候補者様向けの自己応募フォームが十分に整備されていなかった点です。加えて私たちiSiPが伝えたいことが、本当に届けたい相手に正しく響いていないと感じていたんです。というのも、それまでWebサイトは社内で作ったものだったこともあって、企業としての方向性やフィロソフィーを示すMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)といった、自分たちの伝えたいことを客観的に整理できておらず、全体的にちぐはぐな印象だったんです。これが大きな課題でしたね。
この状況をDNX Venturesさんに相談したところ、「それはもうプロに頼んだ方がいいですね」と背中を押していただいて。ちょうど資金調達が完了して、財務的にも基盤が整ったタイミングだったので、本格的にリニューアルに踏み切ることができました。もし自分たちだけでやろうとしていたら、予算的にも限界があって、ここまで踏み込めなかったと思います。」
DNX Ventures様がコーポレートサイトリニューアルプロジェクトを支援するにあたり、特に重要視されていたことは何でしたか?
上野さん「iSiPさんのリブランディングは、弊社の投資先の中でもちょっとユニークな特徴がありました。一般的にコーポレートサイトのリニューアルは、マーケティングや「広く認知を取る」ことが目的に設定されることが多いんですが、今回はそうではありませんでした。事業の特性上顧客が限られることから、顧客認知ではなく創薬に詳しい専門人材採用のための認知獲得が、主たる目的と位置付けられていました。」
新名さん「採用の観点で私たちが一番重視したのは、従来の業界とは全く異なる打ち出し方、つまり「差別化」をどう具体化するかでした。
私たちはAIを活用した創薬技術を開発しています。だからこそ、コーポレートサイトリニューアルを通して、従来とは一線を画した業界内での独自のポジションを確立したいと考えていました。というのも、私たちが持つ創薬技術は、これまでの業界のやり方とは全く異なるので、従来通りの訴求をしてしまうと、良くも悪くも他の企業の中に埋もれてしまう恐れがあったんです。
この差別化の目的は、「顧客となる創薬企業」と「採用候補者の方々」に、私たちの考えや目指すものを、正確な情報として届けることにありました。
個人的な想いとしては、「もっと自分の腕を振るいたい」「どうせなら海外で活躍したい」といった意欲的な人たちに響いてほしいという気持ちも強くありましたね。」
その辺りの想いはリニューアル後のトップページにも現れていると感じています。トップページは英語表記、日本語表記はサブドメイン的(https://corp-isip.com/jp/home)な構成になっているので。グローバルに人を採用していきたいというご意向があるのでしょうか?

新名様「はい、その通りです!ご質問いただいたように、海外の方にも見ていただけるよう、トップページは英語表記にしました。そして、その判断は間違っていなかったと実感しています。先日、スイスに住む外国籍の研究者の方から応募をいただいたんですよ。
それに、住んでいる国は関係ないと考えています。病気や薬に国境はありませんから。本当に良い薬を生み出せれば、きっと世界中に届けられると信じています。」
専門性・感性・スピード―発注先に求めた条件
コーポレートサイトリニューアルの発注選定において重要視していたポイントについてお伺いさせてください。
新名さん「私たちiSiPが重要視したのは、少数の顧客と採用候補者を惹きつける「差別化」ができるかどうかでした。その意味で、企業ロゴもリニューアルの対象にすべきだと考えていたんです。従来の創薬ベンチャーって、青や緑を基調にしたロゴが多いイメージがあって、実は弊社も以前は水色系のデザインだったんです。
差別化を図る意味で、以前のロゴとは全く異なる、対極のイメージにしたいという希望がありました。その希望に合致する提案を、クリエイティブには求めていました。加えて、限られたスケジュールの中でそれを提案・実行していただけることも、重要な条件のひとつでした。」
上野さん「私たちがiSiPさんから相談を受けて、どこに依頼するのがいいだろうかと考える際に重要視していたポイントは、大きく分けて三つあります。
一つ目は、新名さんもおっしゃったように、限られた期間で対応いただけること。iSiPさん側にも急ぎで進めたいという意向があったので、そこは外せない条件でした。その前提で、弊社で候補を2社まで絞って、iSiPさんにご提案しました。
二つ目は、専門性の高いテーマに対して、どこまで理解を示してくださるか。医療・創薬の領域は専門的で難易度も高いので、単に〝かっこいいデザイン〟をつくれるだけでは不十分だと考えました。しっかり事業や想いを汲んだ上でご提案いただけることが重要でした。
三つ目に、新名さんの希望を、ブレることなく形にできるかどうか。ここも大事な観点でした。
実際、最終的にCULUMUさんに決めた理由は、これらの希望を満たしていたこと。特に、提案時に製薬・創薬に詳しい方が同席されていたので、安心感は高まりました。」
上野さんがCULUMUを知ったきっかけについてお伺いさせてください
上野さん「以前、弊社の別の投資先から、LP(ランディングページ)制作のご相談を頂いた時に、「ノーコードコーポレート制作プラットフォームのStudioで作りたい」という条件があったので、Studioのパートナー一覧の中から、感度の高そうな会社を2〜3社をピックアップしました。結果として、その案件をCULUMUさんにお任せしたことが、私が初めてCULUMUさんとお仕事をさせていただいたきっかけです。」
〝これがいい〟と思わせる提案力―差別化を形にした共創のプロセス
CULUMUへの依頼内容が決まるまでの流れについてお伺いさせてください
新名さん「2社と面談させていただいて、その1週間後にはCULUMUさんへの発注を決めました。決め手になったのは、プロジェクト全体の方針をしっかりと汲み取ったうえで、短期間での対応を前提にした提案をしてくださったことです。「このスピード感で、ここまで理解してくれるんだ」と感じて、安心してお願いできました。」
当初、アメリカ西海岸のようなイメージといった発想をいただきました。この発想はどこからのものだったのでしょうか?
新名さん「製薬企業と聞いて、皆さんがどんなイメージを持たれるかは人それぞれだと思います。私は創業以前、日本の伝統的な製薬企業に勤めていました。その反動というわけではないのですが、「自由で闊達な雰囲気にしたい」「フロンティア精神を打ち出したい」という漠然としたイメージを抱いていました。
このイメージの原点は、実は以前1年ほどアメリカのサンノゼに駐在していた経験にあります。西海岸には、洗練された自由さがあって、今回のリニューアルでは、まさにそのイメージを持って臨みました。」
CULUMUからの提案はどのようにまとめられたのですか?

CULUMU岡田(以下、岡田)「最初のヒアリングの段階で、新名さんから「従来の創薬企業によくある青や緑は使いたくない」という強い気持ちを伺っていました。そこで弊社では、国内外70社ほどの創薬・医療系企業が使用しているコーポレートカラーを調査しました。結果、想像以上に「青や緑」のロゴが多いことに私たち自身も驚いたんです。このリサーチ結果も踏まえて、新名さんのご要望に応える色を検討し、提案したのが、今ご覧いただいている資料になります。」

上野さん「CULUMUさんの提案は、とてもロジカルで説得力がありました。「なぜこの色を選んだのか」「なぜこのトーンなのか」が、すべて根拠に基づいていて納得感があったんです。提案資料もすごく刺さりましたね。」
岡田「余談になりますが、実は新名さんのプロフィール写真の背景に、マゼンタ系の花が写っていたことを覚えていて、実は色の提案のヒントになったんですよ(笑)。」

新名さん「え、そうだったんですか!その写真は、実家で母が撮ってくれたものなんです。まさかそんなところからもインスピレーションを得ていたとは驚きです。」
上野さん「短納期の一番難しいところって、「作る時間」よりも「意思決定」を促す提案になっているかどうかだと思うんです。CULUMUさんのすごいところは、相手に「他にもっと良いものがあるんじゃないか」と思わせるのではなく、「これがベストだ」と能動的に意思決定をさせる提案内容だったことだと思います。そう感じさせてくれるクリエイティブって、実はなかなか出会えないんですよ。」
提案の際に工夫された部分はどのようなことでしょうか?
岡田「新名さんは最初から、考えていることをストレートに伝えてくださったので、こちらも「これももしかしたら良いかもしれない」と感じるものは、あえて全て捨てて、「これがベストだ」と思えるもの以外は提案しませんでした。というのも、今回のプロジェクトは短い期間で進める必要があったので、「捨てるものは捨てる」という方針を最初から決めていたからです。」
CULUMU佐藤(以下、佐藤)「そう考えると、iSiPさん側の思い切りの良さ、つまり「AではなくBだ」と言い切っていただけたことも、プロジェクトの推進力になったと言えそうですね。新名さんは、初期段階からデザインやトーンアンドマナーの方向性をお持ちだったということでしょうか?」

新名さん「はい、ある程度のイメージは持っていました。そのイメージにCULUMUさんの提案がぴったりと応えてくれたので、「A案もB案も良いから、追加でC案も提案してほしい」とはなりませんでした。結果的に迷うことなくB案を採用したのですが、想像を超える提案内容だったんです。
iSiPは「AI」と「科学」を掲げているのに、提案されたのは「Emotional Intelligence」を表現したデザインでした。つまり、AIを使うのは人間だからこそ、〝温かみ〟のある表現が必要だという視点です。「これがAI創薬の未来なのかもしれない」と思えるような提案でした。本当に印象に残っています。」

その〝温かみ〟が、今回重要視されていた「差別化」に繋がると感じたのでしょうか?
新名さん「その通りです。コーポレートサイト公開後に、以前勤めていた会社の友人から「この業界では見たことがないサイトだ」「科学的な雰囲気も残しつつ、新しいね」といった感想をもらいました。この出来事は、自分たちの方向性が間違ってなかったと感じられた瞬間でした。」
次の進化へ―信頼から生まれる、継続的な共創パートナーシップ
どのような方に自己応募してほしい、もしくはどう見られたいなどお考えはありますか?
新名さん「研究に情熱を持っているけれど、「こんなはずじゃないのに」と現状に燻っている人に、ぜひ飛び込んできてほしいです。B案には「自由さ」や「温かみ」が表現されていて、それが私たちiSiPへの誘引力に繋がると感じています。」
佐藤「実際に、コーポレートサイト公開後の応募状況はいかがですか?」
新名さん「はい、順調に応募をいただいています。自己応募は海外からが多く、国内は採用エージェント経由の応募が多い状況ですが、「今までの『AI創薬』や『ベンチャー』とは違う」という志望動機をいただくことが多いですね。まさに、狙い通りの反応をいただけていると感じています。」
上野さん「いや、本当にサイトリニューアルの成果が出ていますね!」
短納期という前提ではありましたが、今回のプロジェクトを通してCULUMUをどのように評価されていますか?
新名さん「漠然とした私たちの要求に対して、CULUMUさんはすぐに具体的なクリエイティブを形にしてくれました。誘導されたわけでもないのに、判断に迷うことなく「これだ!」と決められたCULUMUさんの提案力には本当に驚かされました。今だから言えますけど、スケジュール的にもかなり無理をお願いしていたと思っていて…。素人目にも「これは大変だっただろうな」と感じる場面も多く、CULUMUの皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。」
最後に今後CULUMUにまた依頼したいことがあればお聞かせください。
新名さん「今回のリニューアルでは、企業ロゴやコーポレートサイトのトーン、デザインを刷新することができました。今後は、コーポレートサイトのコンテンツにより専門的なページを追加していきたいと考えています。
また個人的な想いとして、いつか社名を変更したいなと思っています。事業が進捗して、実際に新薬を生み出せた暁には、社名を変えたいですね。それに合わせて、デザイン面の進化も必要になると思うので、その時はぜひまたCULUMUさんに相談させてください。次回は短納期ではなく、しっかり時間を確保しますので(笑)。」
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