発達特性や手先に麻痺のある子供たちとインクルーシブデザインを通じて、フットマークの新ランドセル『ぴったセル』の開発を支援

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発達特性や手先に麻痺のある子どもたちとの共創を通じて、フットマークの新ランドセル「ぴったセル」の開発を支援。

特設サイト
https://pittasel.jp/

サマリー

フットマーク株式会社が2026年4月に発売したランドセルリュック「ぴったセル」の開発プロジェクトにおいて、発達特性や手先に麻痺のある子どもたち、その家族とのインクルーシブリサーチを実施しました。

既存製品の利用者から寄せられた「ファスナーやマグネットが使いづらい」という2〜3%の小さな声を起点に、アンケート、デプスインタビュー、日記調査、動画記録などを組み合わせ、子どもたちの日常生活に潜む課題やニーズを抽出。株式会社GKダイナミックスによるプロダクトデザインにつながる開発の土台を構築しました。

さらに、完成した製品の特徴や開発背景を親子に分かりやすく伝える公式Webサイトの企画・制作にも伴走し、当事者の声を製品として社会実装し、社会へ届けるまでの一連のプロセスを支援しました。

クライアントの課題

  • 既存のランドセルリュック利用者へのアンケートにおいて、障害や発達特性などにより「ファスナーやマグネットが使いづらい」という声が2〜3%存在していました。

  • こうした少数の声を個別的な要望として扱うのではなく、子どもたちの身体特性、認知特性、生活動線を踏まえた製品開発上の課題として捉え直す必要がありました。

  • 一方で、子ども自身が感じている使いづらさや、家庭内で行われている工夫の多くは、一般的なアンケートや短時間のインタビューだけでは十分に言語化・把握できません。

  • そのため、当事者の特性に合わせた調査方法を設計し、日常生活の中で生じている行動、感情、つまずき、工夫を具体的に可視化する必要がありました。

  • また、調査で得られた当事者の声をプロダクトデザインに活用できる情報へ整理するとともに、完成した製品の社会的意義や使いやすさを、親だけでなく子ども自身にも分かりやすく伝えるコミュニケーションを設計する必要がありました。

CULUMUの活動

  • 発達特性や身体特性のある子どもと家族を対象としたインクルーシブリサーチの設計

  • 発達特性のある子どもを持つ25家族へのアンケート調査、家庭へのデプスインタビュー、日記調査、動画記録を通じた生活実態の把握

  • 子どもの行動、感情、身体動作、家庭内の工夫を踏まえたインサイト抽出

  • フットマーク、GKダイナミックス、CULUMUによる3社共創体制の構築支援

    親子で一緒に理解できる「ぴったセル」公式Webサイトの企画・制作

  • 製品の特徴だけでなく、当事者との共創による開発背景を伝えるコミュニケーション設計

成果

  • 発達特性や手先の麻痺などにより、従来のファスナーやマグネットを扱いにくい子どもたちの潜在的なニーズを可視化

  • 25家族への調査を通じて、アンケートだけでは把握できない生活動線、身体動作、感情、家庭内の工夫を抽出・当事者の声をプロダクトデザインに活用できる具体的な要件やインサイトとして整理

  • 一般的なカバン開発期間を上回る約3年間、5回にわたる試作と検証を重ねた製品開発を支援

  • 特定の子どもの使いづらさを起点に、障害の有無にかかわらず多様な子どもが使いやすいランドセルリュックを実現

  • 親だけでなく、子ども自身が読んで理解できる公式Webサイトを制作

  • 当事者の声を起点としたフットマーク、GKダイナミックス、CULUMUの専門性を生かした3社共創による開発体制を構築

2〜3%の小さな声を、製品開発の起点となるインサイトへ転換

フットマークが展開する通学カバン「ラクサックジュニア」は、布製で軽量かつ、荷物を構造的に軽く感じさせるランドセルリュックとして、多くの子どもや家庭から支持されてきました。一方、利用者アンケートの中には、障害や発達特性などを背景に「ファスナーやマグネットが使いづらい」という声が2〜3%存在していました。

フットマークは、この声を少数意見として見過ごすのではなく、「特定の誰かにとって本当に使いやすいカバンをつくる」というインクルーシブデザインの出発点として捉えました。

CULUMUは、こうした言葉の背後にある具体的な困りごとを明らかにするため、発達特性のある子どもを持つ25家族を対象にアンケート調査を実施。その後、家庭へのデプスインタビューや、子ども自身による日記・動画記録を組み合わせた生活密着型の調査を行いました。

調査では、単に「開けにくい」「使いづらい」といった評価を聞くのではなく、朝の支度、荷物の出し入れ、学校での使用、帰宅後の片付けなど、一連の生活動線を確認しました。

その結果、手指の動かし方、注意の切り替え、感覚的な好み、操作手順の理解、時間に追われることによる焦りなど、複数の要因が使いやすさに影響していることが明らかになりました。

また、理学療法士の資格を持つ保護者の専門的な視点や、朝の準備時間をストップウォッチで計測する家庭独自の工夫など、通常の製品調査だけでは捉えにくい知見も抽出しました。

これらの情報を、プロダクトデザインを担うGKダイナミックスが活用できる形に構造化し、製品の操作性や構造、意匠を検討するための土台として提供しました。

約3年間・5回の試作を支えた、当事者起点の共創プロセス

一般的なカバンの開発が1年程度で進められる中、「ぴったセル」の開発には、2023年春から約3年の期間が費やされました。

当初はフットマーク社内で検証を進めていましたが、利用者の細やかなニーズを、カバンの構造や意匠としてより高度に具現化するため、2023年夏からGKダイナミックスがプロダクトデザインに参画しました。

CULUMUはリサーチパートナーとして、当事者や家族との接点設計、調査手法の開発、調査実施、インサイト抽出を担当。フットマーク、GKダイナミックス、CULUMUの3社が、それぞれの専門性を生かしながら開発を進める共創体制を構築しました。

開発では、「春のラン活に発売時期を合わせる」ことを優先するのではなく、「当事者の声に応える、本当に納得できる製品をつくる」という方針を重視しました。2026年1月時点で試作は5回に及び、その都度、子どもたちの使用状況や反応を確認しながら改善が重ねられました。

特定の子どもが感じている使いづらさに深く向き合うことで、結果として、障害や発達特性の有無にかかわらず、多様な子どもにとって直感的で扱いやすい製品へと発展しました。

親子で一緒に理解できるWebサイトを制作

CULUMUは、完成した「ぴったセル」の機能や開発背景を社会に正しく届けるため、公式Webサイトの企画・制作も担当しました。

一般的なランドセルのWebサイトが、主な購入者である保護者を中心に設計されているのに対し、「ぴったセル」のWebサイトでは「親子で一緒に見られること」をコンセプトに設定しました。

子ども自身が製品の特徴を読んで理解し、自分が使うカバンについて考えられるよう、漢字にはふりがなを付け、情報量やメッセージを整理。複雑な表現を避け、製品の使い方や特徴を直感的に理解できる情報設計を行いました。

また、単なる機能紹介にとどまらず、少数の声から開発が始まった経緯や、子どもたち・家族とともに試行錯誤を重ねてきたプロセスを伝えることで、「ぴったセル」が持つ社会的な意義を可視化しました。

リサーチによって当事者の声を発見し、その声をプロダクトへ反映し、さらに社会へ伝えるところまで一貫して支援することで、インクルーシブデザインを製品とコミュニケーションの両面から実装しました。

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