発達特性のある子どもや家族との共創を通じて、コスモスイニシアの「お支度スペース」と「落ち着く居場所」を備えた住まいづくりを支援

コスモスイニシア

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サマリー

株式会社コスモスイニシアが取り組む、インクルーシブデザインの考え方を取り入れたリノベーションマンションの商品開発において、発達特性のある子どもとその家族を起点としたリサーチ、課題の構造化、アイデア創出に伴走しました。

英国規格協会が発行するニューロダイバーシティに関するガイドライン(PAS 6463:2022)などの文献調査に加え、有識者へのヒアリング、当事者参加型ワークショップを実施。発達特性のある子どもや家族が日常生活で感じている困りごとを抽出し、感覚特性と住環境のミスマッチを「お困りごとマップ」として可視化しました。

さらに、抽出した課題を単に解消するだけではなく、「より楽しく、心地よく過ごせる住まい」という視点からアイデアを検討。予定や持ち物を視覚的に整理できる「お支度スペース」や、気持ちを落ち着けて一人で過ごせる「落ち着く居場所」など、設備、間取り、素材、居場所づくりに関する設計要素へと落とし込みました。

これらの知見が反映されたリノベーションマンション3室が、2026年4月から5月にかけて竣工しました。

クライアントの課題

  • 住宅の商品企画では、居住者の属性や一般的な生活動線を基に、できるだけ多くの人にとって使いやすい間取りや設備を検討することが一般的です。

  • 一方で、発達特性や感覚特性のある人が住環境の中で感じている困難は、本人や家族が日常的な工夫によって対処していることも多く、従来の住宅調査だけでは顕在化しにくいという課題がありました。

  • 例えば、外出前に予定や持ち物を整理できず混乱する、光や音などの刺激によって落ち着かなくなる、気持ちが高ぶった際に一人になれる場所がないといった困りごとは、個人の特性だけに原因があるのではありません。

  • 人の感覚や認知の特性と、設備、間取り、照明、音環境、素材、収納方法などの住環境がかみ合っていないことで、困難が生じている可能性があります。そのため、当事者や家族の声を直接聞くだけでなく、困りごとがどのような生活場面で生じ、その背景にどのような環境要因があるのかを構造的に把握する必要がありました。

  • また、発達特性のある人への個別的な配慮として閉じるのではなく、そこで得られた知見を、多様な人にとって自然で使いやすい住宅の商品価値へと転換することが求められていました。

    た、発達特性のある人への個別的な配慮として閉じるのではなく、そこで得られた知見を、多様な人にとって自然で使いやすい住宅の商品価値へと転換することが求められていました。

CULUMUの活動

  • ニューロダイバーシティと住環境に関する国内外の文献・ガイドライン調査、英国規格協会が発行するニューロダイバーシティ関連規格の分析

  • 発達特性や住環境に関する有識者へのヒアリング、発達特性のある子どもとその家族が参加する共創型ワークショップの設計・実施

  • 日常生活における行動、感情、感覚刺激、環境との関係性の整理、感覚特性と住環境のミスマッチを可視化した「お困りごとマップ」の作成、抽出した課題を検証・深掘りするための当事者参加型ワークショップの実施

  • 困りごとの解消にとどまらない、楽しく心地よい暮らしに向けたアイデア創出

  • リノベーションマンションの商品企画に活用できる設計要件・示唆の整理、得られた知見の設備、間取り、素材、照明、音環境、居場所づくりへの展開支援

成果

  • 発達特性のある子どもと家族が住環境の中で感じる、顕在化しにくい困りごとを可視化・個人の特性だけでなく、感覚特性と住環境のミスマッチという構造から課題を整理

  • 日常生活における困りごとを、住宅設計や商品企画に活用可能な「お困りごとマップ」として体系化

  • 予定や持ち物を視覚的に整理できる「お支度スペース」を、気持ちが高ぶった際や一人で集中したい際に利用できる「落ち着く居場所」を企画

  • 光や音などの刺激への敏感さに配慮した空間設計の方向性を提示・転倒や衝突のリスクを軽減するデザイン・素材選定に知見を反映

  • 調査で得られた知見を、設備、間取り、素材、居場所づくりなどの具体的な空間要素へ展開

  • インクルーシブデザインの考え方を取り入れたリノベーションマンション3室が竣工

発達特性のある人の暮らしから、住環境に潜む課題を発見

住宅の中で感じる過ごしにくさは、必ずしも間取りの広さや設備の不足だけによって生じるものではありません。

光や音、色、触感、におい、温度、視線、動線といった環境から受ける刺激や、予定を予測することの難しさ、複数の行動を順番に進めることへの負担など、さまざまな要因が生活のしやすさに影響します。

特に、発達特性のある子どもやその家族は、こうした環境とのミスマッチによる困りごとを日常的に経験しています。

一方で、本人や家族が独自の工夫を積み重ねて生活しているため、その困りごとは外部から見えにくく、「本人の苦手さ」や「家庭内の問題」として扱われることも少なくありません。

CULUMUは、こうした個人の側に帰属させられがちな困りごとを、住環境との関係から捉え直しました。

まず、英国規格協会が2022年に発行したニューロダイバーシティに関するガイドラインをはじめ、感覚特性と建築・空間設計に関する文献を調査しました。

さらに、有識者へのヒアリングや、発達特性のある子どもと家族が参加するワークショップを通じて、日常生活の具体的な場面における困りごとを収集しました。

調査では、「何に困っているか」だけでなく、「いつ、どこで、どのような刺激や状況によって困りごとが生じるのか」「その際、本人や家族がどのような工夫をしているのか」までを確認しました。

これにより、住まいの中で生じる困難を、個人の特性と環境条件の組み合わせとして整理することが可能になりました。

「お困りごとマップ」により、生活上の困難と空間要素の関係を可視化

当事者や家族から得られた声は、そのままでは個別のエピソードや要望として扱われてしまう可能性があります。

そこでCULUMUは、収集した困りごとを生活場面、行動、感覚刺激、心理状態、環境要因などの観点から整理し、「お困りごとマップ」として可視化しました。

例えば、外出前に準備が進まないという困りごとについても、単に収納が不足していることだけが原因とは限りません。

必要な持ち物が見えない、物の置き場所が一定ではない、出発までの手順を把握しにくい、家族から複数の指示を受けて混乱するといった要因が複合的に関係している可能性があります。

また、室内で落ち着かなくなるという状況にも、照明のまぶしさ、生活音、家族の動きが視界に入ること、一人になれる場所がないことなど、複数の環境要因が考えられます。

これらをマップとして整理することで、「誰が困っているか」だけでなく、「どのような環境条件が困りごとを生み出しているか」をプロジェクト関係者が共通認識として持てるようにしました。

作成したマップを基に再度ワークショップを実施し、課題の背景や因果関係を当事者とともに検証。設計上優先して検討すべき論点を明確にしました。

外出前の不安や混乱を軽減する「お支度スペース」

調査を通じて明らかになった課題の一つが、外出前の準備に伴う負担でした。

子どもにとって、予定を理解し、必要な持ち物を確認し、複数の準備を順番に進めることは、必ずしも簡単ではありません。

玄関や収納が整理されていても、必要な情報や持ち物が視覚的に把握できなければ、忘れ物や準備の中断が生じやすくなります。

また、家族がその都度、口頭で指示を伝えることは、子ども本人だけでなく、保護者にとっても大きな負担となります。

こうした課題を踏まえ、今回の住戸では、予定や持ち物を視覚的に整理し、外出までの行動を自分で確認しやすくする「お支度スペース」を取り入れました。

必要な情報や物の位置を分かりやすくすることで、予測できない状況への不安を軽減し、子どもが自ら準備を進めることを支援します。

これは発達特性のある子どもだけでなく、忘れ物を減らしたい人、忙しい子育て世帯、高齢者、複数人で暮らす家庭などにとっても活用しやすい仕組みです。

特定の人の困りごとを起点に検討することで、家族全体の準備負担を減らし、日常生活をスムーズにする空間へと発展しました。

自分の状態に合わせて過ごせる「落ち着く居場所」

家庭は本来、安心して過ごせる場所ですが、常に家族の会話や生活音、光、視線、動きなど、さまざまな刺激が存在しています。

刺激に敏感な人や、気持ちの切り替えに時間が必要な人にとっては、住まいの中に一人で落ち着ける場所がないことが、大きな負担になる場合があります。

そこで今回の住戸では、気持ちが高ぶった際や、自分の世界に没頭したい際に、一時的に一人で過ごせる「落ち着く居場所」を設けました。

完全に閉じた個室として隔離するのではなく、家族とのつながりを保ちながら、刺激や視線を適度に調整できる居場所として設計されています。

例えば、ベンチや壁際のスペース、包まれ感のある場所など、住戸ごとの間取りに応じて、自然に身を置ける場所を設けています。

気持ちを落ち着けるための場所があらかじめ住環境に組み込まれていることで、本人が自分の状態に応じて過ごし方を選びやすくなります。

また、家族にとっても、その人が一人になることを拒絶や孤立として捉えるのではなく、心身を整えるための選択として受け止めやすくなります。

「落ち着く居場所」は、発達特性のある人だけでなく、読書や趣味に集中したい人、仕事や家事の合間に気持ちを切り替えたい人など、多様な住まい手にとって価値のある空間となっています。

感覚への配慮を、設備・素材・間取りへ反映

住環境における快適さは、人によって異なります。

ある人にとって心地よい明るさや音が、別の人にとっては強い刺激になることもあります。

本取り組みでは、特定の仕様を一律に「正解」とするのではなく、住まい手が自分の状態や好みに応じて環境を調整しやすくするという考え方を重視しました。

光や音などの刺激に敏感な特性に配慮し、照明、室内の反射、素材感、音の伝わり方、視線の抜け方などを検討しました。

また、周囲への注意を向けにくい場合や、身体の動きを調整することが難しい場合も想定し、転倒や衝突のリスクを軽減するデザインや素材を取り入れています。

これらは、障害や診断の有無によって必要性が分かれるものではありません。

疲労しているとき、子どもを抱えているとき、荷物を持っているとき、加齢によって身体機能が変化したときなど、誰もが一時的に環境とのミスマッチを経験する可能性があります。

当事者の具体的な経験から空間を見直すことで、安全性や使いやすさだけでなく、安心感や居心地といった住まいの質を高める設計につながりました。

課題の解消から、「より楽しく、心地よく過ごせる住まい」へ

本プロジェクトで重視したのは、当事者の困りごとを減らすことだけではありません。

課題を一つずつ解消するだけでは、住宅が持つ楽しさや、自分らしく暮らす喜びが失われてしまう可能性があります。

そこでワークショップでは、「どうすれば困らなくなるか」という問いに加えて、「どのような住まいであれば、もっと楽しく、心地よく過ごせるか」という視点からアイデアを検討しました。

自分で準備できたことが自信につながること、一人で落ち着く時間と家族と過ごす時間を選べること、自分に合った明るさや居場所を見つけられることなど、住まい手の主体性を支える体験を重視しています。

インクルーシブデザインは、すべての人に同じ空間を提供することではありません。

一人ひとりの違いを前提に、自分に合った使い方や過ごし方を選択できる余地をつくることです。

発達特性のある子どもや家族の生活から得られた知見を、設備、間取り、素材、居場所づくりへと展開することで、より多くの人が自分らしく、安心して暮らせる住環境を目指しました。

リノベーションマンション3室への実装

本取り組みから得られた知見は、コスモスイニシアが展開するリノベーションマンション「INITIA & Renovation」の商品企画に反映されました。

2026年4月から5月にかけて、以下の3室が竣工しています。

  • イニシア練馬ブライトステージ

  • ボヌール千石

  • シーズガーデン戸越公園

各住戸では、間取りや既存条件に合わせながら、「お支度スペース」「落ち着く居場所」、感覚刺激への配慮、転倒や衝突リスクを軽減するデザインなどを取り入れました。

一律の設計仕様を適用するのではなく、住戸ごとの条件を踏まえながら、調査で得られた考え方や設計要件を実装しています。

特定の人に向けた特別な住宅をつくるのではなく、発達特性のある人の具体的な経験を起点として、より多くの人が自然に使いやすく、心からくつろげる住まいを提案しました。

今回得られた知見は、今後、リノベーションマンションの商品企画にとどまらず、コスモスイニシアが展開するさまざまな事業への活用が検討されています。

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