AIを“誰も取り残さない側”に設計するために。「AIりんりせんげん」を公開しました

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CULUMUは、AIを誰も取り残さない側に設計するための提言「AIりんりせんげん」を公開しました。

テクノロジーは、身体や言語、置かれている社会的立場、生活環境などの違いに対応しない制度や設計によって生じる不条理を減らす力にもなってきました。社会参加や情報へのアクセス、サービスの利用、意思決定への関与をひらく可能性は、AIにもあります。

一方で、AIの恩恵が届く人と届かない人がいるとき、その差は多くの場合、AIそのものではなく“設計の側”にあります。

インクルーシブデザインが「障害は人ではなく社会の側にある」と問い直してきたのと同じ姿勢で、AIによって生じる偏りや取り残しを“設計の問題”として問い直す。そのための提言が、「AIりんりせんげん」です。

AIりんりせんげん 特設サイト

CULUMU、AIを“誰も取り残さない側”に設計するための提言「AIりんりせんげん」を公開 | 株式会社STYZのプレスリリース

正解を示すのではなく、問い続けるために

「AIりんりせんげん」は、AIの使い方に関する一方的な正解を提示するものではありません。

つくる人・きめる人・つかう人、そしてAIの判断や運用によって影響を受ける人。それぞれが自身の現場に立ち返り、継続して考えるための「問い続ける方法」を提示するものです。

AIと社会は、これからも変わり続けます。だからこそ、この宣言も固定された結論とはせず、社会や技術の変化に合わせて更新し続ける「Living Declaration(生きた宣言)」として設計しました。

AIリテラシーが「個人の心がけ」から制度へと変わりはじめている

AIとの向き合い方は、個人や企業の自主的な判断だけに委ねられるものではなくなりつつあります。

2024年にはUNESCOが、学生や教師が身につける力を体系化した「AIコンピテンシー枠組み」を発表しました。2025年にはEU AI Act第4条において、AIシステムの提供者や導入者に対し、従業員などの十分なAIリテラシーを確保するための措置が求められるようになりました。さらに、OECDと欧州委員会によるAIリテラシーの枠組みも検討されています。

AIリテラシーは、AIの技術を理解し、使いこなす能力だけを意味するものではありません。「技術」「設計」「倫理」のすべてを、人間中心の視点から捉えることが、その土台にあります。

AIをうまく使えるかだけではなく、そのAIが誰のためにつくられ、どのような影響をもたらすのかまで考えることが求められています。

なぜ、AIを“設計の問題”として捉えるのか

段差は、車いすの人の問題ではなく、段差をつくった設計の問題です。この視点は、AIにもそのまま当てはまります。

音声認識、翻訳、字幕などの技術は、これまで情報やサービスからの締め出しを減らす側に立ってきました。AIにも、同じ可能性があります。

しかし、同じAIの機能であっても、ある人には自由を広げ、別の人には新しい排除を生むことがあります。その差を使う人の側の問題として捉えるのではなく、誰を想定し、どのような仕組みをつくったのかという“設計の側”から問い直す必要があります。

既存のAI倫理の多くは、「リスク管理」「透明性」「公平性」を語っています。一方で、「誰が取り残されているか」を具体的に語るものは多くありません。

抽象的な「多様性」ではなく、たとえば、ろう者、外国ルーツの子ども、少数言語を用いる人など、制度や設計上の障壁を経験しうる、顔の見える人々の視点からシステムを問い直す。

「AIりんりせんげん」は、CULUMUがこれまで実践してきたインクルーシブデザインの対象をAIへと拡張し、AIに対する不安ではなく、AIの設計について考えるためにつくられました。

AIは「使えばよい結果が出る」わけではない

AIは、仕事を速くし、成果物の質を高める可能性を持っています。

BCGのコンサルタント758名を対象に、同じ仕事をAIあり・なしで比較した実験では、AIが得意なタスクにおいて、完了できたタスク数、所要時間、成果物の質のそれぞれに向上が見られました。

一方で、AIが不得意な領域では、AIを使ったことで正答率が低下する結果も示されています。AIの能力の境界は、なめらかな一本の線ではなく、得意なタスクと不得意なタスクが隣り合う「ギザギザの境界」として存在し、外側から簡単に見分けることができません。

AIが効く場所では大きな効果を発揮する一方、使う場所を外せば、かえって成果を下げることもある。だからこそ、AIの出力をそのまま受け入れるのではなく、どの資料と照らし合わせ、誰に確認し、どこで人が気づき、止め、直せるのかを考える必要があります。

AI倫理は、原則や規則を一度当てはめれば終わるものではありません。AIという存在と関わり続けながら、その都度、問い直していく実践でもあります。

AIリテラシーをめぐる世界の動きや、AIが「効く場所」と「効かない場所」、倫理を規則から実践へ移すための考え方については、セミナー「みんなのAIりんり——AIが賢くなるとき、それは“誰のため”なのか」で詳しく紹介しています。

「みんなのAIりんり」セミナーの内容を見る

「姿勢」「問い」「根拠」の3つの層

本宣言は、さまざまな立場の人が自分の現場で問い直せるよう、「姿勢」「問い」「根拠」という3つの層で構成しています。

1.姿勢——すべての人へ

AIと向き合うときに、少し立ち止まって考えるための8つの姿勢です。

特定の正解を示すものではなく、つくる人・きめる人・つかう人、そしてAIの判断や運用によって影響を受ける人の誰もが、自分の現場で問い直すための出発点となります。

2.問い——CULUMUの立場

8つの姿勢を踏まえ、AIの性質から導いた、CULUMUが実務の中で大切にしたい8つの問いです。

正解として掲げるのではなく、自らの設計と実践のなかで、決めきれなさを残しながら問い続けます。

3.根拠——事実

問いのもとになる「AIの性質」を15項目・4層に整理しました。

あわせて、1811年から現在までのAIをめぐる出来事を、「意味の近さ」と「時間」で配置した3D年表として公開しています。

公開時に521件だった年表は、その後も更新を続け、2026年7月のセミナー時点では584件の出来事を収録しています。

年表には、AIに関する技術だけでなく、文化、人々の発言、実際に起きた事故、制度なども掲載しています。ひとつの技術が社会に広がるとき、それは技術だけの話では終わらず、文化や事故、制度、そして人の声へとつながっていくからです。

宣言と年表は、世界中の有識者の声、過去に現実に起きたAIインシデント、世界の主要な指針を集約したリサーチに基づいて構築しています。動的なHTMLによって、AIの発展や社会の変化に合わせて随時更新できる形にしています。

AIと向き合うための「8つの姿勢」

  1. 自分自身の想い、感覚を大切にしてみる。

  2. 目の前の相手を大切にしてみる。

  3. 社会全体のことを大切にしてみる。

  4. 物事の仕組みを考えてみる。

  5. 何が正しいのか、悩み続けてみる。

  6. 自分自身で調べよう。ファクトチェックしてみる。

  7. 責任を持ってみる。

  8. それでもつくり続けてみる。

この8つは、AIに対する規則ではありません。自分自身や目の前の相手を大切にすることから始め、社会や仕組みに視野を広げ、何が正しいのか悩みながらも、責任を持ってつくり続けるための姿勢です。

CULUMUが実務の中で大切にしたい「8つの問い」

  1. AIを使うとき、どんな人や状況が想定から抜け落ちているのだろうか?

  2. AIの出力だけで、その人の経験や状況をわかったことにしていないだろうか?

  3. AIの出力は、どの資料と照らし合わせ、誰に確認できるのだろうか?

  4. AIに肯定されたことで、自分たちの問い方や前提を疑わなくなっていないだろうか?

  5. AIを通すことで、誰の声が拾われ、誰の声がこぼれ落ちるのだろうか?

  6. AIが判断や行動に関わるとき、どこで人が気づき、止め、直せるのだろうか?

  7. AIが手軽に見えるとき、その手軽さは何に支えられているのだろうか?

  8. AIや使われる場面が変わっても、同じ前提で使い続けていないだろうか?

これらは、CULUMU自身が設計と実践のなかで問い続けるためのものでもあります。

AIの出力だけで人の経験や状況を理解したことにしていないか。AIを通すことによって、どの声が拾われ、どの声がこぼれ落ちるのか。AIが判断や行動に関わるとき、人が気づき、止め、直せる余地はあるのか。

答えを一つに決めるのではなく、AIや使われる場面が変わるたびに、自分たちの前提を問い直していきます。

各姿勢・各問いの詳細、その根拠となるAIの性質(15項目)、AIをめぐる3D年表は、「AIりんりせんげん」特設サイトおよび3D年表でご覧いただけます。

バージョン v0.1・2026年6月公開

更新し続ける「生きた宣言」へ

AI技術とその社会的影響は、日々刻々と変化しています。

CULUMUは「AIりんりせんげん」を社会の動向に合わせて継続的に更新し、多様なステークホルダーとともに、誰もが等しく権利とアクセスを保障されるインクルーシブなAIの社会実装に向けた対話を深めていきます。

これは、完成した答えではありません。

AIを誰も取り残さない側に設計するために、問い続け、対話し、更新し続ける。その出発点として、「AIりんりせんげん」を公開します。

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