インクルーシブな子ども向けプロダクト事例(1)
エピソード3
Report
:できることが広がる、やさしい仕掛け多様な子どもたちに寄り添うプロダクト事例集

【連載第3回】できることが広がる、やさしい仕掛け 多様な子どもたちに寄り添うプロダクト事例集
インクルーシブなプロダクトを考えるうえで、まずは子どもたちがどのような場面で困りごとに直面しているのかを理解することが重要です。
子どもたちの日常には、学び、遊び、移動、交流など、さまざまなシチュエーションがあります。
シチュエーション別に見る、子どもの困りごと

この図では、子どもたちが日常のさまざまなシチュエーションで直面する困りごとの例を整理し、それぞれにどのようなアプローチができるかを示しています。
また、発達障害や身体障害といった特性に関連する困りごとのように見えることが、低年齢の子どもや障害のない子どもたちの得意不得意や性格によっても当てはまる場合があることもわかります。
図では、それぞれの困りごとに対して考えられるアプローチをタグとして整理しています。これらのタグは、具体的な解決方法を示すものもあれば、今後の可能性として考えられるアプローチを示すものも含まれています。
プロダクトやデジタルテクノロジー
空間的な工夫
人の理解や対応
制度やルールの改善
教育やトレーニング方法の工夫
法的・行政的サポート
このように、子どもたちの困りごとに対するアプローチは、プロダクトだけでなく、環境や制度、人の理解など、さまざまな側面から考えることができます。
ここでは、多様な子どもたちの手助けになるプロダクトやデジタルテクノロジーの事例を、シチュエーションごとに紹介します。これらのプロダクトを必要とする子どもたちが使用できるように、環境を整えることや周りの理解なども合わせて重要です。
本記事では、「学ぶ」場面に焦点を当て、子どもたちの学びを支えるプロダクトの事例を紹介します。
学ぶ
株式会社オフィスサニー - できるびより「魔法のザラザラ下じき」

ザラザラタッチでイメージ通りの文字が書けるようになる下じき
「魔法のザラザラ下じき」は、特殊印刷技術で表面に細かいドットを施した独特のザラザラした表面になっています。
鉛筆の動きが振動になって手や脳により強く伝わることで、頭の中でイメージしている文字と手の動きが一致しやすくなり、文字が上手に書けるようになります。
整った文字を書けるようになるには、えんぴつを思った通りに動かす力「運筆力」が必要になりますが、子どもは手指の筋力、骨格の発達が十分でないため簡単ではありません。
また、発達障害や感覚過敏を持つ子どもたちは手や指先の力加減を適切に調整するのが苦手な場合があり、筆圧の調整が難しいことがあります。
この商品は専門作業療法士の先生が監修し、実際に療育現場や小学校の支援級の子どもたちにも使ってもらい、試作を重ねながら開発されました。
特定の支援が必要な子どもたちだけでなく、書き心地を改善したいすべての子どもに役立つ製品として展開されています。
製品ページ:魔法のザラザラ下じき
株式会社オフィスサニー - できるびより「楽よみ!しおり」

読み飛ばしを防止する子ども用リーディングトラッカー
リーディングトラッカーとは:
リーディングトラッカーとは、読書や文章の読み進めをサポートするツールやデバイスで、特に読書が苦手な子どもや学習障害を持つ人々に役立つ製品です。
多くのリーディングトラッカーは、文字の行や段落をハイライトしたり、目で追いやすいように特定の部分を強調表示する機能などがあり、どこまで読んだのか、次にどこを読めばよいのかが分かりやすくなります。
「楽よみ!しおり」は、小学生と一緒に開発することで、既存のリーディングトラッカーでの「文字が見える部分が狭く、子どもが読む文字の大きさに合わない。」「素材がツルツルしすぎていて、次の次の行に動かしてしまい、結果的に読み飛ばしてしまう。」という意見を取り入れ、以下のような特徴が付けられています。
透明な部分が広く、大きな文字でも読める。
次の次の行も見えるので、見通しを付けながら読める。
裏面のザラザラ加工で、すべり過ぎず次の行に動かしやすい。
子どもの筆箱に入る長さに設計。
帯部分の色には、メディアユニバーサルカラーを採用。
製品ページ:楽よみ!しおり
日本ノート株式会社 - スクールラインプラス「合理的配慮のためのノート」

学びの場でのお困りごとから生まれたノート
発達障害や学習に困難を持つ子どもたちに配慮したデザインのノートです。
従来の学習帳よりも大きく書けるように設計されており、罫線が通常よりも太くなっていたり、筆記部分が白抜きになっていたりするので、どこに文字を書けばよいかが一目で分かるようになっています。
また、1行ごとにあみかけをすることで縦方向にずれにくいように工夫されているタイプや、リーダー入りで低学年にも書きやすく教師や保護者が使用する部分はグレーアウトされている連絡帳など、さまざまなタイプがあります。
従来よりも厚めの本文用紙を使用することで、消しゴムをかけたときにシワになりにくく、めくりやすくなっています。
このノートは、第17回キッズデザイン賞《子どもたちを産み育てやすいデザイン》部門を受賞しています。
製品ページ:合理的配慮のためのノート
株式会社 教育技術研究所 - センサリーツール「ふみおくん」
センサリーニーズ(感覚欲求)に応えることで情緒的な安定を保つ

センサリーツールとは:
感覚処理のサポートを目的とした道具や玩具で、特に発達障害や感覚過敏、感覚鈍麻などを持つ子どもたちに役立つアイテムです。これらのツールは、視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚などの感覚を刺激して、感覚の調整や集中力を高め、リラックスや落ち着きを促す役割を果たします。
「ふみおくん」は、椅子や机の脚に固定し、足の裏やすねに感覚刺激を与えることで、気持ちを落ちつかせたり、集中させたりする効果が期待できます。ADHDなどの多動が見られる子だけでなく姿勢の悪さが気になる子どもにもおすすめです。
これまで指導者が自費で購入してきた「ふみおくん」が、教材の製造・販売をするメーカーのカタログにが掲載されたことで、公費で購入することが可能になりました。実際に取り入れている学校によると、今後はセンサリーツールをメガネのように当たり前に使える環境を作っていくことが求められると言います。
製品ページ:【多動・姿勢の改善サポート】センサリーツール ふみおくん
「ふみおくん」に似た効果を持つセンサリーツールは海外でも作られています。
日本でも「動きたい」という欲求を抑制するのではなく、欲求を受け入れ配慮する方法へと変化が出てきています。

まとめ
今回紹介したように、「学ぶ」場面における子どもたちの困りごとに対しては、さまざまなプロダクトが生まれています。
これらの事例から見えてくるのは、特定の子どもだけを対象とした特別な解決策ではなく、多様な子どもたちがそれぞれの方法で学びに参加できる環境を広げる工夫です。
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