デザイン経営とは何か?9つの取組の入り口と期待されるイノベーション

インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違いと歴史・概念

インクルーシブデザインとは

インクルーシブデザインとは、あらゆる人々が利用しやすいように、身体的、認知的、感覚的、言語的、文化的な多様性を考慮したデザインのことを指します。つまり、障がいを持つ人や高齢者、異なる文化や言語を持つ人など、あらゆる人々が同じように利用できるように、デザインを行うことを意味します。

インクルーシブデザインは、製品やサービスを多様なユーザー層にアクセシブルで使いやすいように設計するアプローチを指します。特定の「インクルーシブデザインの原則」という一般的に認められたセットは存在しません(ユニバーサルデザインの7つの原則のように)。しかし、インクルーシブデザインの核となるいくつかの重要な考え方や価値観はあります。

以下は、インクルーシブデザインのアプローチを形づくる一般的な原則や考え方です:

多様性の認識とともに選択肢を提供する

すべての人々は異なるという基本的な事実を認識し、それを尊重します。特に複雑なタスクや標準的でないタスクには、利用者がそれらのタスクを完遂できるように、様々な手段を提供することを検討しましょう。

多くの場合、タスクを完遂するには複数の手段があります。利用者が好むであろう手段をあなたが決めつけることはできません。別のレイアウトや、タスクを完遂できる別の手段を提供することによって、利用者は自分に合った選択やそのときの自分の状況に合った選択をすることができます。

参加と共働、利用者に制御させる

対象となるユーザーグループとともにデザインプロセスを進めることで、真のニーズと要望を理解します。そして、利用者が自ら制御できるようにしましょう。利用者はそれぞれ好みの方法によって、コンテンツにアクセスして、コンテンツとやりとりできるようにすべきです。

利用者がブラウザやプラットフォームの標準設定を変えること (デバイスの向き、フォントサイズ、ズーム、コントラストなど) を制限したり、不可能にしたりしないでください。さらに、ユーザーが制御できる手段がある場合を除いて、ユーザーが要求していないのにコンテンツを変化させることは避けましょう。

同等の体験を提供する

すべてのユーザーが等しく製品やサービスを利用できるようにすることを目指します。あなたの作ったインターフェースがすべての人に同等の体験を提供できるようにして、利用者がそれぞれのニーズに合った手段を用いても、コンテンツ品質が損われることなくタスクを達成できるようにしましょう。

置かれている状況、選択する手段、利用する文脈など、利用者には多様性があります。利用者が情報を読んだり操作をしたりするために異なるアプローチやツールを用いたとしても、インターフェースが各利用者に提供する体験は、価値、質、効率性の面で、同等でなければなりません。

状況を考慮する柔軟性

異なるユーザーのニーズや状況に適応できるようなデザインを求めます。利用者は様々な状況であなたの作ったユーザーインターフェースを使います。状況に関係なく、あなたの作ったユーザーインターフェースが利用者に貴重な体験を提供できるようにしましょう。

新規の利用者、既存の利用者、仕事中の利用者、在宅の利用者、移動中の利用者、プレッシャーにさらされている利用者、など人々の状況は様々です。これらの状況はすべて、人々の体験に影響を与える可能性があります。障害がある人のように、既にインタラクションに大変さを覚えている人にとっては、こうした状況による影響によって、著しく使いづらくなっていることがあります。

明確な情報で一貫性を保つ

誰もが理解しやすいように情報を提供します。これには、情報の提示方法や言語の明瞭さも含まれます。馴染みのある慣例を用いて、それを一貫して適用しましょう。

使い慣れたインターフェースには、よく知られたパターンが流用されています。インターフェースの意味や目的を確固たるものにするために、これらのパターンをインターフェース内で一貫して使用する必要があります。この原則を、機能、ふるまい、エディトリアル、そしてプレゼンテーションに適用しなければなりません。同じものは同じように提示することによって、利用者も同じものは同じように利用できるでしょう。

コンテンツの優先順位と包摂的なプロセス

デザインの全フェーズ(調査、プロトタイピング、テストなど)で多様性と包摂性を考慮します。ユーザーが主たるタスク、機能、情報に集中できるように、それらをコンテンツやレイアウト内で優先順位付けしましょう。

主たる機能が明確に露出していなかったり、優先順位付けがなされていなかったりすると、インターフェースを理解するのが難しくなる可能性があります。サイトやアプリケーションが多くの情報や機能を提供していても、利用者は一度にひとつのことにしか集中することができません。インターフェースの主たる目的を明確にして、その目的を達成するのに必要なコンテンツや機能を提示しましょう。

継続的な学習で価値を付加し続ける

ユーザーのフィードバックを収集し、デザインを継続的に改善します。機能の持つ価値や、その機能によって様々な利用者の体験をどう向上させることができるかを考えましょう。

各機能は、利用者がコンテンツを見つけたり、やりとりしたりするのに効果的で多様な手段を提供することによって、利用者の体験に価値を付加すべきです。音声、位置情報、カメラ、バイブレーションなどの各種 API のようなデバイス機能を活用することや、接続されたデバイスまたはセカンドスクリーンとの統合がいかにして利用者に選択肢を提供できるかといったことを、検討してください。


これらの原則は、多様なユーザーのニーズや背景を認識し、それに応じて製品やサービスを設計することに焦点を当てています。インクルーシブデザインは、デザインの過程で多様性を最大限に活かすことを目指し、排除や差別を排除することを重視しています。

このようにインクルーシブデザインは、社会的包摂を促進し、多様性を尊重することで、より公正で平等な社会を実現するための重要な取り組みとなっています。

インクルーシブデザインの歴史

インクルーシブデザインの考え方は、主に20世紀の終わりから21世紀初頭にかけて発展してきましたが、そのルーツはさらに昔に遡ります。以下は、インクルーシブデザインの歴史的背景と主な発展のポイントを概説したものです:

  1. 障害者の権利運動: 1960年代から1970年代にかけて、特にアメリカで障害者の権利運動が盛り上がりを見せました。この運動は、公共の場でのアクセス権や平等な権利を求めるもので、設計や建築におけるアクセシビリティの重要性を浮き彫りにしました。

  2. ADA (Americans with Disabilities Act): 1990年にアメリカで制定されたこの法律は、障害者の権利を保護し、公共の施設やサービスのアクセシビリティを義務付けました。

  3. インクルーシブデザインの提唱:ロンドンにある国立の美術大学「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」名誉教授であるロジャー・コールマン氏によって、1990年代前半に提唱されました。

    デザイナーでもあるコールマン氏は、車椅子を使う友人から自宅キッチンのデザインを依頼され、車椅子ユーザーが使いやすいような機能性を考慮したデザインを考えました。ところが、その友人の希望は「他の人が羨ましいと思うようなキッチンがいい」というものだったのです。
    コールマン氏はこの経験で、障がいのある人と同じ視点に立ち、彼らが本当は何を望んでいるのかを捉えた上でデザインすることの大切さに気づいたそうです。

  4. テクノロジーの進化: 2000年代に入ると、デジタルテクノロジーの進化と共に、ウェブアクセシビリティが重要なテーマとなりました。W3CのWCAG (Web Content Accessibility Guidelines) など、ウェブコンテンツのアクセシビリティガイドラインが策定され、デジタル空間におけるインクルーシブデザインの重要性が高まりました。

  5. デザイン思考: 21世紀に入り、デザイン思考のアプローチが普及。ユーザーセンタードデザインの中心に、ユーザーの多様性や実際のニーズを深く理解することが強調されるようになりました。

現在、インクルーシブデザインは、製品やサービスだけでなく、ビジネスや社会的な取り組み全体においても重要な考え方として受け入れられています。社会の多様性を反映したデザインは、より多くの人々に利益をもたらし、経済的な成功や持続可能な未来を実現するための鍵となっています。

ユニバーサルデザインとは

「ユニバーサルデザイン」は、全ての人々が、年齢や能力に関係なく、製品や環境を利用できるようにすることを目指すデザインのアプローチを指します。これには障害を持つ人々だけでなく、高齢者や子どもなど、あらゆる状況の人々が含まれます。ユニバーサルデザインの主な目的は、排他的な特別なデザインや後付けの改修を避け、最初から広範なユーザー層を考慮してデザインすることです。

ユニバーサルデザインの概念は、以下の7つの原則に基づいています:

誰にでも公平に利用できること(公平性; Equitable Use)

製品や環境は、あらゆるユーザーに公平に利用可能であるべきです。誰もが同じように利用することができ、利用するときに特別扱いや差別されないことが重要です。

使う上で自由度が高いこと(自由性・柔軟性; Flexibility in Use)

ユーザーの多様な能力や好みを受け入れ、選択肢を提供します。たとえば、高さが異なること、右利きや左利きに関係なく利用できるなど、使う人それぞれの好みや能力に合わせられること、使い方を選べることが重要です。

使い方が簡単ですぐわかること(単純性・シンプルで直感的; Simple and Intuitive)

どんな経験や知識を持つユーザーでも容易に理解・使用できるようにします。使ったことがない方でもすぐに分かるように、単純で直感的に利用できることが大切です。また、情報を大切な順にまとめたり、使い方の説明を効果的に提供することも大切です。

必要な情報がすぐに理解できること(わかりやすさ; Perceptible Information)

必要な情報は、どんな状況のユーザーにも明確に伝わるように提供されるべきです。誰にでも情報が効果的に伝わるように、絵や文字、音や光などい方法で提供することや、大切な情報はできるだけ強調して分かりやすくすることが大切です。

うっかりミスや危険につながらないデザインであること(安全性; Tolerance for Error)

危険や誤解を最小限に抑えるデザインとなっているべきです。危険やミスをできる限り防ぐために、警告を出したり、操作を間違っても安全に使えるようにすることが大切です。

無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること(省体力; Low Physical Effort)

製品や環境の利用は、効率的で快適であるべきです。効率よく、気持ちよく、疲れないで使えるように、同じ動作の繰り返しを少なくしたり、自然な姿勢で、あまり力を入れなくても使えるようにすることが大切です。

アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること(スペースの確保; Size and Space for Approach and Use)

あらゆるサイズや姿勢のユーザーがアクセスや利用ができるように配慮されるべきです。誰にでも利用しやすいスペースや大きさを十分に確保することが大切です。

7つの原則以外に、経済性、耐久性、品質、美しさ、文化性、自然環境配慮などを加える考え方もあります。

これらの原則は、製品や建築、サービス、デジタル環境など、多岐にわたるデザインの分野に適用可能です。ユニバーサルデザインのアプローチは、多様性を尊重し、社会全体が参加できる包摂的な環境を作るための基盤となっています。

ユニバーサルデザインの歴史

ユニバーサルデザインの歴史は、社会の変化、技術の進化、そして障害者の権利運動など、さまざまな要因が絡み合って発展してきました。以下は、ユニバーサルデザインの歴史的背景と主な発展のポイントを概説したものです:

バリアフリーの概念

1970年代、建築や都市設計の文脈で「バリアフリー」の概念が登場しました。これは、物理的障壁を取り除くことに重点を置いたデザインのアプローチでした。

ユニバーサルデザインの誕生

1990年代初頭、アーキテクトのロナルド・L・メイスによって「ユニバーサルデザイン」の7つの原則が提唱されました。これは、特定のユーザーグループではなく、全ての人が利用できるデザインを目指す考え方で、障害者だけでなく、高齢者や子供など、幅広いユーザーグループのニーズを考慮したデザインのアプローチとなりました。

デジタル時代のユニバーサルデザイン

2000年代以降、デジタルテクノロジーの発展と共に、デジタル空間におけるユニバーサルデザインの重要性が高まりました。ウェブアクセシビリティやユーザーインターフェースの設計において、多様なユーザーのニーズを考慮することが求められるようになりました。

ユニバーサルデザインの発展は、社会のニーズや技術の進化に応じて続いています。今日では、持続可能な社会を実現するための重要な要素として、さまざまな分野でユニバーサルデザインの原則が取り入れられています。

インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違いとは

インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違い

「インクルーシブデザイン」と「ユニバーサルデザイン」は、製品や環境をより多くの人々が利用できるように設計するアプローチとして広く知られています。両方ともアクセシビリティと多様性の認識に基づいており、それらの目的は非常に似ているため、これらの概念はしばしば混同されることがあります。しかし、いくつかの違いや独自の焦点が存在します。

インクルーシブデザイン (Inclusive Design)の特徴

人々の多様性を認識: インクルーシブデザインは、様々な背景、能力、状況を持つ人々のニーズに対応するためのアプローチです。参加と共同: デザインプロセスでは、対象となるユーザーグループを積極的に取り入れ、その声を取り込むことを重視します。フレキシブルで適応可能: 製品や環境は、ユーザーの異なるニーズや状況に適応できるようにデザインされます。

ユニバーサルデザイン (Universal Design)の特徴

広範なユーザー層の考慮: ユニバーサルデザインは、年齢や能力に関係なく、全ての人が製品や環境を利用できるようにすることを目指しています。7つの原則: ユニバーサルデザインには、具体的な7つの原則があり、これらの原則に基づいて設計が行われます。一度のデザインで多くをカバー: 製品や環境は、最初から広範なユーザー層を考慮してデザインされることが理想とされます。

インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの基本的な違い

これらの概念の最も基本的な違いは、アプローチの焦点(プロセス)と応用範囲にあります。インクルーシブデザインは特定のユーザーグループのニーズに対応することを重視し、多様性を最大限に活かすことを目指しています。

一方、ユニバーサルデザインは、最初から全てのユーザーを考慮してデザインすることを目指しており、特定の原則に基づいて具体的なアプローチを取ります。

このように、インクルーシブデザインは価値創造型プロセスであるのに対し、ユニバーサルデザインは仮説検証型プロセスであると言えます。

プロジェクトによるインクルーシブデザインとユニバーサルデザインの向き・不向き

インクルーシブデザインとユニバーサルデザインのどちらが適しているかは、プロジェクトの目的や対象とするユーザー層、リソースの制約などにより異なります。

  • インクルーシブデザインは、多様なユーザーのニーズを具体的に取り入れ、個別のフィードバックを重視するプロジェクトに適しています。多様な視点を反映することで、製品やサービスの質を向上させます。

  • ユニバーサルデザインは、特定の調整を必要とせず、多くの人々に対応できる単一のソリューションを提供するプロジェクトに適しています。公共施設や広く利用されるインフラストラクチャにおいて、その利便性が発揮されます。

デザインは問題の解決策を見つけ、生活を豊かにする体験を創り出すことです。今日の世界では、プロダクトデザインは見た目が良くて機能的であるだけでなく、多様なユーザーグループに対して包括的でアクセス可能である必要があります。

デジタル時代において、アクセシビリティと多様性を考慮したデザインは不可欠です。テクノロジーがあらゆる背景、年齢、能力を持つ人々を繋げる中で、良いデザインは視覚的に魅力的であるだけでなく、直感的で誰にとっても使いやすく、周囲の世界を簡単にナビゲートし、相互作用できるようにする必要があります。

多様なユーザーに対応するための3つのデザイン手法があります:

  • インクルーシブデザインはデザインプロセスにおいて多様性を取り入れ、幅広い能力に対応するソリューションを作り出す積極的なアプローチです。

  • ユニバーサルデザインは、適応や専門的なデザインを必要とせずに、すべての個人が利用できる環境、製品、システムを作ることに焦点を当てています。

  • アクセシブルデザインは、障害を持つ個人がデジタル製品や物理的環境に効果的にアクセスできるようにし、確立されたガイドラインや標準に準拠することを保証します。

これらのデザイン原則は、人間中心のアプローチへのシフトを反映しており、共感、理解、包括性を強調しています。これらを組み合わせることで、アクセス可能で真に包括的な環境、製品、体験を創り出すことができます。

参考

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