デザイン経営とは何か?9つの取組の入り口と期待されるイノベーション
インクルーシブとは: 意味・定義から取り組み事例まで
インクルーシブという言葉は、最近特に注目されている概念の一つです。社会や企業、教育、デザイン、テクノロジーなど、さまざまな分野で「インクルーシブ」というキーワードが使われるようになりました。しかし、その意味や背景、具体的な取り組みについて詳しく理解している人は少ないかもしれません。本記事では、「インクルーシブ」の定義やその重要性、さまざまな分野での取り組み事例について詳しく解説します。

出典:すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例/明石市
インクルーシブの意味
インクルーシブ(inclusive)とは、「包括的な」という意味を持ちます。具体的には、あらゆる人々を平等に受け入れ、参加させ、尊重することを指します。ですので、「インクルーシブ(Inclusive)」という言葉は、「包摂的」や「包括的」と訳されます。英単語の「Include(含む、取り込む)」に由来しており、「あらゆる人を排除せず、受け入れる」姿勢や仕組みを指します。
この「インクルーシブ」は、「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)という言葉から来ており、これは「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表します。
つまりインクルーシブとは、「包み込む」「分けへだてない」「やさしい」「安心」「みんな一緒」「配慮」「わかりやすい」「包摂」など、いろんな意味が含まれた言葉なのです。
社会学や経済学の文脈では、以下のように広く解釈されます。
多様性の尊重
人種、性別、年齢、宗教、障がいの有無、性的指向などにかかわらず、すべての人々が平等に機会を得られる社会を目指します。
社会的包摂と参加の促進
誰もが社会や組織の中で自分らしく参加できるようにする仕組みや文化を作ることがインクルーシブの目標です。
バリアフリーとアクセシビリティ
物理的・社会的・心理的な障壁を取り除き、誰もが自由にアクセスできる環境を整えることを意味します。
このようにインクルーシブは、多様な背景や人々の違いを尊重し、それを認め、それを活かすことを目的としています。これは、異なる性別、年齢、人種、民族、宗教、性的指向、障がいの有無などの多様な背景を持つ人々を受け入れ、認めることが含まれます。
インクルーシブの定義
「包摂・包括」の反対は「排除」
「インクルーシブ」の反対は「イクスクルーシブ」。「排除的、排他的」という意味です。「一部の人を外へ追い出す」「のけものにする」ということですね。私たちの社会から「排除(イクスクルージョン)されてきた人たち」がいるという事実に気づかなくてはなりません。
私たちの暮らしの多くは、主に健常者の日本人、ストレートな性的指向者などに最適化されています。多様性に配慮した組織づくりだけでなく、マイノリティの「個々の考え方や能力をいかに活用していくか」にフォーカスを当てて、同じ社会の中でで各々の能力を最大限発揮できる機会を提供することが求められています。
また文化、人種、宗教、年齢、性別、デジタルリテラシーなど、様々な理由で組織・コミュニティから認知的・社会的に排除される可能性があります。例えば、私たちが提供するデジタルサービスは高齢者にアクセスできない可能性があります。産休・育休からの復帰や復帰後のキャリアパスのイメージを構築することが難しい女性は退職してしまうリスクがあります。
インクルーシブと関連する概念
インクルーシブの概念は、以下の用語と密接に関係しています。
ダイバーシティ(多様性)
インクルーシブは、ダイバーシティを実現するためのアプローチの一つです。多様性を受け入れるだけでなく、活用するための具体的な取り組みを指します。エクイティ(公正さ)
平等(Equality)と似ていますが、エクイティは個人の異なるニーズに応じた支援を提供する考え方を重視します。アクセシビリティ(利用可能性)
障がいの有無にかかわらず、すべての人が物理的またはデジタルな環境にアクセスできるようにする取り組み。
インクルーシブな環境づくり(基礎的環境整備)の重要性
インクルーシブな環境は、例えば、インクルーシブな教育、インクルーシブな職場、インクルーシブな社会などがあります。
インクルーシブな教育では、「すべての子どもが平等に教育を受ける権利を持ち、多様な背景やニーズを持つ子どもたちが共に学べる環境を整えること」を目指す教育方針です。特に、障がいの有無、国籍、言語、社会経済的な背景などに関係なく、すべての生徒が尊重される教育の在り方が重視されています。
インクルーシブな職場では、従業員や社員、顧客、パートナーなど、あらゆるステークホルダーにとって良い結果をもたらすと考えられています。これは、より多様で創造的なアイデアやソリューションを生み出し、企業のイノベーション力を高めることができるからです。また、従業員のやる気や忠誠心を向上させ、生産性を高め、企業の経営成績を向上させることもできます。
したがって、インクルーシブな環境を作り上げることは、世の中にとって重要な課題の1つであり、事業者の社会的責任の一環としても位置付けられています。
インクルーシブとノーマライゼーション
インクルーシブとノーマライゼーションは、両方とも社会的な包摂を促進するためのアプローチですが、異なる意味を持ちます。
インクルーシブの特徴
インクルーシブは、社会的な多様性を認め、受け入れ、尊重することを目的としています。これは、人々が自分らしくあり続けることができるように、社会が多様性を受け入れることを促進することを意味します。例えば、障がい者やLGBTQ+の人々が、社会の一員として完全に受け入れられ、尊重されることを目指します。
ノーマライゼーションの特徴
一方、ノーマライゼーションは、障がい者や異なる能力を持つ人々が、普通の人々と同じように扱われることを目的としています。これは、障がい者や異なる能力を持つ人々が、自分らしく生きることができるように、社会が彼らを受け入れることを促進することを意味します。例えば、障がい者が普通の人々と同じように学校や職場で働くことができるように、環境を整えることを目指します。
両方のアプローチは、社会的な包摂を促進するために重要ですが、異なる観点からアプローチしています。インクルーシブは、多様性を認め、尊重することを目的としていますが、ノーマライゼーションは、障がい者や異なる能力を持つ人々が、普通の人々と同じように扱われることを目的としています。
インクルーシブの理念とSDGs
インクルーシブとは、社会のあらゆる人々が平等に参加し、誰もが尊重される社会を目指す理念です。この理念は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標10である「人々の平等」にも関連しています。
SDGsは2030年までに貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、水、エネルギー、経済成長、産業、不平等、都市化、気候変動、海洋、陸上生態系、平和、パートナーシップなど、17の目標を達成することを目指しています。
目標4:質の高い教育をみんなに
誰一人取り残さない教育システムの構築。
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げる。
目標10:人や国の不平等をなくそう
貧困や格差を是正する政策の推進。
目標11:住み続けられるまちづくりを
包摂的で安全かつ持続可能な都市を設計すること。
目標16:平和と公正をすべての人に
あらゆるレベルでものごとが決められるときには、実際に必要とされていることにこたえ、取り残される人がないように、また、人びとが参加しながら、さまざまな人の立場を代表する形でなされるようにする。そして、国内の法律や国際的な取り決めにしたがって、だれでも情報を手に入れられるようにし、基本的な自由がおかされず、守られるようにする。
インクルーシブな社会を実現するためには、この中でも特にSDGsの目標10である「人々の平等」を達成することが重要です。この目標は、すべての人々が平等に参加し、誰もが尊重される社会を実現することを目指しています。また、SDGsの目標5である「ジェンダー平等」も、インクルーシブな社会を実現するために重要な目標です。
インクルーシブな社会を実現するためには、社会のあらゆる人々が平等に参加できるような環境を整備することが必要です。また、社会のあらゆる人々が尊重されるような教育や文化の普及も重要です。SDGsの目標4である「質の高い教育をみんなに」や、目標16である「平和と公正をすべての人々に」も、インクルーシブな社会を実現するために重要な目標です。
総じて、インクルーシブな社会を実現するためには、SDGsの目標10や目標5、目標4、目標16など、複数の目標を達成することが必要です。これらの目標を達成することで、社会のあらゆる人々が平等に参加し、誰もが尊重される社会を実現することができます。
インクルーシブと社会の取り組み
インクルーシブとは、あらゆる人々が平等に参加し、尊重される社会を目指す考え方です。社会の取り組みとしては、以下のようなものがあります。
バリアフリーの整備
身体的な障がいを持つ人々が、社会的な活動に参加しやすい環境を整備することが必要です。例えば、車椅子での移動がしやすい施設や、音声案内がある公共交通機関などが挙げられます。
ダイバーシティの尊重
人々の多様性を尊重し、それぞれの個性を認めることが大切です。例えば、性別や性的指向、人種や民族、宗教などに関わらず、あらゆる人々が平等に扱われる社会を目指すことが必要です。
インクルーシブ教育の普及
教育を通じて、あらゆる人々が自己実現を図ることができるようにすることが必要です。例えば、障がいを持つ人々に対しても、適切な教育を提供することが必要です。
障害者雇用の促進
あらゆる人々が、自分の能力やスキルに応じた仕事に就くことができるようにすることが必要です。例えば、障がいを持つ人々に対しても、適切な職場環境を整備し、雇用を促進することが必要です。
以上のような取り組みが進められることで、インクルーシブな社会を実現することができます。
インクルーシブと企業の取り組み
インクルーシブとは、多様性を尊重し、すべての人が平等に参加できる社会や組織を指します。企業においても、インクルーシブな環境を作り出すことが求められています。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
多様性(ダイバーシティ)を尊重する文化の醸成
企業内での多様性を尊重する文化を醸成することが大切です。そのためには、トップダウンでの取り組みが必要です。経営陣が多様性を尊重し、それを社員に伝えることが重要です。
バリアフリーな環境とアクセシビリティの整備
身体的な障がいを持つ人や、性別や性的指向が異なる人など、多様な人々が働きやすい環境を整備することが求められます。例えば、車椅子での移動がしやすいように、建物やオフィスの設備を整えることや、段差のない玄関、多言語対応の案内板などが挙げられます。
また、視覚障がい者が利用しやすいウェブサイト設計を行う。スクリーンリーダーに対応したHTML構造の採用や、色覚多様性に配慮した配色設計が例として挙げられます。
多様な人材の採用
多様な人材を採用することが、インクルーシブな企業づくりには欠かせません。採用時には、性別や年齢、国籍などに関係なく、能力や経験を重視することが大切です。
ダイバーシティ、エクイティ・アンド・インクルージョン(DE&I)の推進
DE&Iは、多様性と公正性、インクルージョンを組み合わせた考え方で、企業においても注目されています。DE&Iを推進することで、多様な人材を活かし、企業の成長につなげることができます。
しかし、ダイバーシティ、エクイティ・アンド・インクルージョン(DE&I)の取り組みと一口に言っても、女性活躍や障がい者雇用など、企業によって様々な切り口が考えられます。これまでの「ジェンダー平等」のみに特化したDE&Iのあり方から更に一歩踏み込み、より多角的で包括的なDE&Iが求められる時代となりつつあります。
これらの取り組みを行うことで、企業はよりインクルーシブな環境を作り出し、社員のモチベーションや生産性の向上につなげることができます。また、社会的責任を果たすことができると同時に、多様な人材を活かし、企業の成長につなげることができます。
インクルーシブの取り組み事例
Microsoft Japan「Work-Life Choice Challenge」
Microsoft Japanは、2019年8月に1週間の労働時間を4日間に短縮する「Work-Life Choice Challenge」を実施しました。この取り組みは、従業員のワークライフバランスを改善することを目的としており、従業員の生産性やモチベーションの向上につながりました。
Airbnb「Open Doors」
Airbnbは、2017年に「Open Doors」というプログラムを開始しました。このプログラムは、難民や災害被災者などの人々に無料で宿泊施設を提供することを目的としています。これにより、Airbnbは社会的責任を果たすとともに、多様性と包括性を促進することができました。
Google「Women Techmakers」
Googleは、女性エンジニアのキャリアを支援するために「Women Techmakers」というプログラムを開始しました。このプログラムは、女性エンジニアのためのイベントやワークショップ、メンターシッププログラムなどを提供しています。これにより、Googleは女性エンジニアの参加を促進し、多様性と包括性を実現しています。
Salesforce「Ohana」
Salesforceは、社員や顧客、パートナーなどを含めた「Ohana」というコミュニティを作り上げています。このコミュニティは、多様性と包括性を重視し、すべての人が自分らしく働くことができる環境を提供しています。また、Salesforceは、LGBTQ+コミュニティや障がい者コミュニティなどの支援にも力を入れています。
Unilever「Dove Real Beauty」
UnileverのDoveブランドは、「Dove Real Beauty」というキャンペーンを展開しています。このキャンペーンは、女性の美しさに対する社会的なステレオタイプに挑戦し、多様性と包括性を促進することを目的としています。Doveは、女性の多様性を称賛し、自信を持って自分らしく生きることを支援しています。
インクルーシブの現状と課題
インクルーシブとは、あらゆる人々が平等に参加し、尊重される社会を目指す考え方です。しかし、現状ではまだまだ課題が残されています。
差別や偏見
まず、障がい者やLGBTQ+などのマイノリティーに対する差別や偏見が根強く残っています。これにより、彼らが社会的に孤立し、機会や資源にアクセスできない状況が生まれています。
基礎的環境整備
また、教育や雇用などの分野でも、インクルーシブな環境が整っていないことがあります。例えば、障がい者の就労率は低く、LGBTQ+の人々も職場での差別やハラスメントに直面することがあります。
国内外の地域性・法律
さらに、地域社会や政治においても、インクルーシブな取り組みが進んでいないことがあります。例えば、地域の施設や交通機関がバリアフリーでない場合、障がい者が社会的に参加することが難しくなります。
これらの課題を解決するためには、社会全体での意識改革や、法律や政策の改善が必要です。また、個人レベルでも、差別や偏見に対する理解を深め、インクルーシブな社会を実現するための取り組みを行うことが求められています。
多様性を尊重し、差別のない社会の実現は私たち全員の責任です。今後もインクルーシブな社会の構築に向けた取り組みが進められることを期待します。
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